アパートメント - 前田有一

脅かすほうも驚くほうも、そろって絶叫する(20点)

 『友引忌(ともびき)』(2000)、『コックリさん』(2004)などの"韓流ホラー"で知られるアン・ビョンギという監督は、中田秀夫(『リング』(98年、日))や清水崇(呪怨シリーズ)に匹敵する恐怖映画の名手なんだそうだ。

 私はまったくそうは思わないが、その彼の待望の最新作がこの『アパートメント』。自分が住むマンションの向かいの巨大アパートの住民が続々変死するという、どうやらいい不動産屋に恵まれなかったヒロインのお話だ。

 ソウル近郊の高級マンションに住むディスプレイデザイナーのセジン(コ・ソヨン)は、ある日のPM9:56、向かいの"幸福アパート"の明かりが一斉に消えるのを目撃する。翌日そのアパートでは自殺体が発見された。さらにまたPM9:56、アパートの明かりが一斉に消える。そして翌日、変死体が発見されるのだった。

 観客は、この不気味なアパートに秘められた恐るべき過去を、ヒロインと共に解き明かしていく。豊かな感受性で常識を超えたものの存在を信じる主人公と、あくまで科学の範疇で地道な捜査を続ける刑事。はたしてどちらが先に真相に迫るのか。

 引きこもりや集合住宅における孤独感、飛び降り自殺など、イマドキのキーワードをちりばめた現代ホラーだ。しかし、私がこれを見てヘンだなあと思うのは、出てくるユーレイもヒッキーも被害者たちも、とにかくやたらとやかましい事。揃いもそろって火病なのか知らないが、絶叫しながら襲ってくるユーレイというのはどうなのか。

 恐怖映画にとって重要な映像表現も、不気味にカクカク動くユーレイなど、どれも既視感を感じさせるものばかり。これではホラーの名手なんだか、よそからの切り張りの名手なんだかよくわからない。ああ、火病のユーレイがオリジナルなのか。

 ヒロインのクライマックスの選択も、なにやら自己陶酔しまくって勝手な論理的帰結を見るし、そこで明らかになる真相のトンデモ具合もまたすごい。ネタをばらすわけにいかないので、ここに詳しく書けないのが残念だ。

 この結末まわりの不具合がなかなか致命的で、作り手だけは納得しているのやもしれないが観客はまったくついていけないといった有様。先述した刑事にしても、ここではありえない行動と台詞を平然とはいてのける。もう少し脚本の段階からていねいに作ってみてはどうなのか。

前田有一

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