◆やりたい放題のわがまま社長というユニークなヒーロー像が痛快。CGの派手な見せ場に美女と、ゴージャスな見所の連続で、前作以上の出来(80点)
「アイアンマン」シリーズは、主人公が真面目なヒーローではなく、わがままでセレブ、兵器産業に関わる企業の2代目社長というのが面白い。しかもナルシストで、「正体」が世界中にばれている。自分は世界平和を民営化したと公言し、スーツを着て酒に酔い、武器を使って顰蹙を買う。そして、自分の非をなかなか認めない。普通のヒーロー像と全く真逆なのだ。だが、嫌な感じはしない。ロバート・ダウニーJrがユーモアたっぷりに演じていると、嫌味がないというか、嫌味なところも許せてしまう。むしろ痛快で、人間として様々な欠点があることで、普通のヒーローよりも共感できるほどだ。
今回もわがまま放題なバカ社長のいい加減な活躍が実に面白い。それに、グゥイネス・パルトロウにスカーレット・ヨハンソンと、周りも美女だらけなのである。特筆すべきは「スーツケース型」のアイアンマンスーツ。「トランスフォーマー」(2007)みたいに、スーツケースが変形してスーツになっていくところがとても良く出来ている。素直に、あんなスーツ欲しい、と思ってしまった。
ストーリーのメーンは、兵器会社同士の争いだ。国家も、ゲリラみたいなミッキー・ロークも絡んでくるが、中心はあくまでも企業間競争なのである。ロークの悪役は「レスラー」(2008)の雰囲気を何となく引きずっている。彼は企業というリングで負けた父親の仇を討つため、アイアンマンに挑む。2世対2世の戦いだ。方やセレブ、方や貧乏人という、格差社会の怨念もあるだろう。映画の主人公は、昔は貧乏だが才能のある若者が普通で、セレブの2世は、むしろ敵役が多かったように思うが、いつの間にか、映画の主人公が2世ばかりになり、セレブが貧乏人を倒すストーリーが普通になってしまった。世の中が停滞して、下層から上層へ成り上がるという夢が持てず、最初からセレブに生まれないとどうしようもないと思ってしまうのだろうか。
まあ、アイアンマンスーツを作るには莫大なお金がかかるし、悪と戦うには時間もいる。サラリーマンのように時間に縛られていたらヒーローは務まらない。本作を見て、やっぱり主人公が貧乏人というのは、無理があるなあ、と思ってしまった。スパイダーマンも、バイトや学業、デートと、ヒーローとしての活動との間で悩んでいたし。
今回は軍人役のドン・チードルもアイアンマンスーツを来て、ダウニーJrと一緒に暴れまくる。アイアンメン(複数)である。ロボット軍団とアイアンメンとの戦い、ボディラインにぴったりの黒い衣装を来たヨハンソンの格闘術と、ゴージャスな見所がたっぷりで、最後まで楽しめた。前作よりスケールアップして面白くなっていると思う。
(小梶勝男)