根本的に野球に対する“真摯さ”に欠けている作品だった。(点数 30点)
(C)2011「もしドラ」製作委員会
もちろん原作に沿ってストーリーが構築されているのは分かっている。
しかし、ロクに捕球もできず練習もほとんどしない高校の野球部が、
いくらその意識を180度転換したからといって甲子園に出られるほど野
球は甘くない。せっかく映画にするのならば、原作にはなかった野球
のリアリティにもっとこだわり、「地方予選のベスト16くらいの実力
はあるが甲子園には届かない」レベルのチームにしていれば楽しめた
だろう。根本的に野球に対する“真摯さ”に欠けている作品だった。
程高野球部のマネージャーになったみなみは、やる気のない部員の前
で「甲子園に連れて行きたい」と宣言するが、マネージャーの仕事を
覚えるために手にした解説書はドラッカーの「マネジメント」だった。
「マネジメント」は野球ではなく経営学の本。みなみは書かれた言葉
を自分なりに解釈して野球部にイノベーションを導入しようとする。
試合での指針、部員・監督のモチベーション、練習法の見直し。それ
らは程高野球部だけでなく高校野球のセオリーを覆すものばかりで、
秋に始まったチーム作りはわずか10カ月程度で劇的な変化をもたらす。
そこには登場人物の人間性を深く掘り下げる試みはなく、“小説仕立
ての実用書”風の原作スタイルを踏襲するのみ。だが、野球部監督が
尊敬する、池田高の蔦監督・取手二高の木内監督といったイノベータ
ーたちも基礎的な練習はきっちりとやっていたはず。これなら、原作
を読んでいれば前田敦子ファン以外は映画館に足を運ぶ必要がない。
(福本次郎)