めぐりあう時間たち - 前田有一

字幕で見る日本人にはすすめにくい(55点)

 本年度アカデミー賞の主演女優賞を取った、ニコール・キッドマン主演のドラマ。その他もメリル・ストリープ、ジュリアン・ムーアといった芝居上手の役者がそろう。

 実際、彼女らの演技力には惚れ惚れするものがあり、特にニコールなどは、本物のうつ病患者じゃないかと見まがうほどの役作り。演技に対するその真摯な態度が伝わってくる。

 しかし、だからといって面白くなるとも限らないのが映画の難しいところ。英国エセックスの風景、美術、音楽、どれも魅力たっぷりだが、筋書きに華がなく、すべてぶち壊しになりかねない勢いだ。しっとりとしたムードに浸りながら画面を見ていても、どうも先の展開に対する興味が湧いてこない。

 3つに別れた物語が最後に収束するプロットは、じつに凝ったものだし、それなりに驚きの仕掛けもあったりするが、そこに至るまでがあまりに長い。おまけに、監督自ら「あえてわかりにくく作った」と言っている通り、登場人物の心理がつかみにくいというのも、感情移入しづらくなる原因のひとつ。

 ここで注意せねばならないのは、この監督が「わかりにくく作った」といっているのは、英語圏の人々が見てもわかりにくいという意味。ってことは、字幕で映画を見る国の人々にとっては、なおさら難解に感じられるということだ。

 私も、いくつか意味不明な字幕があり、あとでプレス資料の監督インタビューを読んで、初めてそのシーンの意味がわかったといった事があった。

 監督は、「そこにはこういう意味を込めて、登場人物のこうした感情を表している」というような事を言っていたが、私はそれを読んで、「そんなのわかるわけないだろ!」と思わず心で叫びたくなった。

 などと書いていたら、なんでも映画の半券を持っていくと、次からは1000円の割引料金で見れる仕組みになっているらしい。つまり、1回見ただけじゃわからない映画だよと、宣伝会社も認めたようなもので、なんだか親切な話だ。

 よって、『めぐりあう時間たち』を楽しむためには、原作その他の補助要素をうまく使い、理解を深める努力が必要になる。

 最低条件として、ヴァージニア・ウルフという作家について、その背景について予習していくということ、次に、彼女の著作『ダロウェイ夫人』を読んでいることが必要になる。最後に、字幕に頼らないで見れる程度の英語力があれば、この映画をほぼ完璧に楽しむことが出来るだろう。

前田有一

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