さんかく - 小梶勝男

◆30男と恋人、その妹。徹底的にダメな3人の三角関係をリアルに描いたコメディー(81点)

 「さんかく」は男女の三角関係である。釣具店のアルバイト店員で30歳の百瀬(高岡蒼甫)と、同棲している恋人・佳代(田畑智子)のアパートに、夏休みを利用して、佳代の妹、桃(小野恵令奈)が転がり込んでくる。中学3年生で15歳だが、体は大人の桃は、無防備に振る舞い、百瀬をドキドキさせる。やがて、百瀬は桃に夢中になり、佳代と別れる。納得のいかない佳代は百瀬のストーカーとなり、百瀬は桃のストーカーとなっていく。

 「純喫茶磯辺」の吉田恵輔監督は、この3人を、とことんダメな人間として描いている。百瀬は自分の似顔絵を愛車にペイントし、桃を相手に昔の喧嘩を自慢するという、絵に描いたようなダメ男ぶり。30になってもアルバイト店員で、後輩に偉そうに振舞うので嫌われているが、それに気づいてもいない。桃が電話に出なくても、延々と携帯に留守番電話を入れ続ける。佳代は友人からマルチ商法に誘われても疑わず、百瀬が出て行くと、嫌われても延々と後を追い、自殺まで企てる。桃は利己的で、15歳にして女のズルさが身に付いている。

 3人とも、どうしようもなくダメな感じがするのは、それだけリアルで、見ている方が身につまされるからだ。まるで自分のことを見ているような気がするのである。恋愛において、こういうダメな関係は常にある。というよりも、普通の恋愛は、ダメな関係とイコールそのものだろう。

 電話に出ない桃に怒り、叫ぶ百瀬。一方の佳代は、百瀬の留守中に部屋に忍び込み、気づかれない程度に掃除をしたり、冷蔵庫の中身を補充したりする。桃は東京にいる憧れの先輩を誘うが、名前も覚えてもらえず、振られたにもかかわらず、バイト先まで押しかけ、遠くからじっと見ている。実にみっともない場面ばかりだが、誰もが思い当たるみっともなさだと思う。高岡蒼甫と田畑智子、そしてAKB48の小野恵令奈が好演している。特に小野恵令奈の、演技と感じさせない自然さに感心した。舌足らずの話し方が役にぴったりだ。

 この映画は観客にとって、リトマス試験紙にもなるかも知れない。3人のうち、誰に最も共感出来るかで、自分の性格が分かると思う。いわば、「さんかく占い」として楽しめる。3人とも共感出来ない、というのは無し。誰かを選んでもらいたい。そこから、見たくなくて目を背けていた、自分の本当の姿が浮かび上がって来るかも知れない。映画評論家の佐藤忠男は「映画は自惚れ鏡」である、と言った。美化した自分を映画の中に見ているという名言だ。逆に本作には、カッコ悪い、本当の自分を発見出来るだろう。

 ラスト、「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」のように、3人は3すくみの状態になる。この三角形が美しい。3人は複雑な表情なのだが、これから、相手のダメさを許すことで、自分のダメさも許せるようになるのではないかという、そんな予感が漂っている。観客もまた、ダメな自分を許すことが出来るような気がしてくる。この光景だけでも、本作を見る価値はあると思う。

小梶勝男

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