ジュディ・デンチのふつうのおばちゃんぶりがたまらない! (点数 90点)
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タイトルを見て、別れ別れになった恋人たちが再び巡り会う話かと思ってしまいました。
でも違うんですよね。これは、50年前に引き裂かれた息子を探す母の物語なんです。
1952年のアイルランド。10代で未婚のまま妊娠したフィロミナ(ソフィー・ケネディ・クラーク)は家を追い出され、修道院で男の子を
出産します。
アンソニーと名づけ愛しますが、ただ働きをさせられ、面会は1日1時間だけ。
しかも、3歳になったアンソニーをアメリカに養子にだされ、一切の権利を破棄させられます。
以来、わが子のことを一瞬たりとも忘れたことのないフィロミナ。ついに息子の50歳の誕生日に、娘・ジェーン(アンナ・マックスウェル・マーティン)に打ち明けました。
母のため、ジェーンは元ジャーナリストのマーティン(スティーヴ・クーガン)に記事にしてほしいと持ちかけます。記事に再起をかけるマーティンは、修道院に問い合わせても、らちがあかないため、フィロミナとアメリカに旅立ちますが……。
マーティン・シックススミスのノンフィクション本『The Lost Child of Philomena Lee』を原作としています。ばりばりの実話です。
かなり重いテーマなのですが、ジュディ・デンチとスティーヴ・クーガンの掛け合いがコミカルで微笑んでしまうことしきりです。
特にジュディ・デンチの普通のおばちゃんぶりがすごいです。『007』シリーズでクールなMを演じていたとは思えないくらいのはじけっぷりです。
延々とロマンス小説のあらすじを話したり、機内サービスがタダだと知り、喜々としてお酒を頼んだり、かわいらしさ爆発。
本年度アカデミー賞主要4部門にノミネートされ、残念ながら受賞は逃しましたが、ジュディ・デンチに主演女優賞をとってほしかったです。
息子が現在どうなっているかわからず、不安だけれどそれでも会いたいと願う彼女の姿に、物事をやり始めるのにけして遅いことはないと勇気づけられます。
そして明らかになる真実。すべてを許し受け入れる彼女の姿にうるうるしてしまいます。
許すというとは、とても難しいけれど、すばらしいことなのだと再確認し、また涙があふれてしまうハズ。
(小泉 浩子)