あずみ - 前田有一

◆2時間20分のなかで40秒だけはいい映画(40点)

 人気アイドル上戸彩を主演にした漫画チック時代劇。北村監督は、小山ゆうの原作コミックの大ファンで、喜んでこの仕事を引き受けたという。原作のファンなら、さぞ見事に映画化するだろうと、誰もが期待する実写映画化だ。

 北村監督は、アクション映画『VERSUS』で国際的な評価を得た人で、その個性的な殺陣の動きには定評がある。しかしこの『あずみ』は、『VERSUS』よりはるかに予算があるはずなのになぜ? といいたくなるほどチープな出来栄えだ。

 しかも、監督お得意のアクションシーンまで平均以下。その迫力の無さといったら、はるかに低予算で作られた『VERSUS』をはるかに下まわる。

 また、いわゆる遊び心というか、妙なおふざけがいくつかあるのだが、そのユーモアセンスも外し気味。例えばクライマックスで、爆発した建物から人間が吹っ飛ばされるCG場面があるが、あれで笑いを取れると思っているならかなり痛い。

 『あずみ』は、可愛らしい顔をした上戸彩が、ギャップのある激しい動きをするアイドルアクションあたりがコンセプトなのだと思うが、だとしたら、金をかけるところが間違っている。どうでもいいような夢のシーンにまで、凝ったCGを使う必要などあるのかと思う。そのカネを、売りであるアクション場面につぎこめばもっとよくなるはずなのに。

 映画史上初の200人斬りというのも、出来あがりは寂しいものだ。そもそも、一人vs多数というのは、肩透かしになるパターンが多い。よほど見せ方のアイデアが豊富にないと、単調になってしまう。何しろ、観客からすれば、雑魚は何千人いたところで、どうせ死ぬと分かっているのだから、緊迫感などはなからないのだ。

 上戸彩も、観客を大いに脱力させる。演技の上手下手はともかく、曲がりなりにも時代劇に出るからには、最低限の役作りというものをしてほしい。時代劇の扮装をしてもコギャルにしか見えない才能というのも、ある意味すごいが。

 あずみのゆかいな仲間たち(9人)もひどい。皆どうみてもその辺の貧弱な現代っ子にか見えぬ。もっと体を鍛えろよと、誰もが思うこと間違い無い。

 邦画の場合、こういういところにあまりこだわらないようだが、本格的なアクション映画を作るなら、少なくとも身体の出来ている役者を使ってほしいものだ。演技もだめ、アクションもだめ、顔と人気だけで本当にいいのか。オダギリジョーと竹中直人はさすがに上手いが、あとはほぼ全滅ではないか。

 ……とまあ、非常に厳しいことばかり書き連ねたが、こうした娯楽アクションは、今の邦画のもっとも弱い部分だから、私は何としても改善して欲しいのだ。人気アイドルを使って、適当に作れば客が来るだろうという安直な商売をしていては、邦画マーケットはいつか壊滅することが目に見えている。そうなってからでは遅い。

前田有一

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