コッポラの胡蝶の夢 - 岡本太陽

巨匠フランシス・フォード・コッポラ10年振りの監督作品(85点)

 例えば、年老いて体に不自由をきたし、いろいろとやりたいことが出来なくなっている時に、突然20代、30代の若さを取り戻したらどうするだろう。老いの為に半ば諦めていた事が出来る様になるとしたら…

 1938 年の復活祭の日、70歳の言語学者ドミニク・マテイ(ティム・ロス)は故郷のルーマニアはブカレストに到着する。彼が腕に抱える青い封筒には興奮剤が入っており、それを飲んで死ぬつもりだった。しかし、その日は豪雨。傘を持っていた彼は皮肉にも道路の真ん中で突然雷に撃たれてしまう。その後ドミニクは現地の病院に搬送されるが、驚くべき事に身体的に若さを取り戻していく。歯も生え変わり、傷が癒えていく中、彼は婚約者だったローラ(アレクサンドラ・マリア・ララ)の事を想う。ローラはその昔ドミニクがあまりにも研究に没頭し過ぎる為、不信感から婚約を白紙に戻したのだ。そしてその後彼女は出産が原因で亡くなってしまった。彼女の事を忘れられないドミニクだったが、彼は言語の起源の研究の為に生涯を捧げた。そして再度30代の若さを取り戻したドミニクは更なる研究を進めようとする。しかしながら、教授でもあるドミニクの医者の書いた記事が原因でナチスはドミニクに興味を示す様になる。そして身の危険を感じたドミニクはスイスに逃げる。戦争が終わった後も、彼はスイスにいたが、ある日山登りをしている時に車に乗ったローラに瓜二つのヴェロニカ(アレクサンドラ・マリア・ララ)という女性に出会う。嵐が来ると警告するドミニクだったが、ヴェロニカは傘を見せ気にしないと言う。嵐の後、ドミニクは彼女の事が気になり捜索する。そして彼女の車を発見するが、その側には落雷の跡があった…。

 SF映画の様でもあるこの『コッポラの胡蝶の夢(原題:YOUTH WITHOUT YOUTH)』という映画、不思議なタイトルが付けられているが、一度映画を観るとそのタイトルの意味が分かる。というよりも内容そのままだ。『若さのない若者』、直訳するとこうなる。70歳がいきなり30代になるのだから確かにタイトル通りである。

 この不思議な映画を監督したのはフランシス・フォード・コッポラ。1997年にマット・デイモン主演の『レインメイカー』という作品を監督したが、今回はそれ以降初の監督作品。10年の時を経て彼が監督したのは大作映画と思いきや、なんと低予算映画。しかし、8カ国語を使いこなす原作者ミルチャ・エリアードの同名小説を基に製作される作品のもとに、『フォー・ルームス』『海の上のピアニスト』『PLANET OF THE APES 猿の惑星』のイギリス出身俳優ティム・ロス、『ヒトラー?最期の12日間?』『コントロール』の今世界が注目しているルーマニア出身の美人女優アレクサンドラ・マリア・ララ、そして『ゴッドファザー』シリーズ、『地獄の黙示録』の編集を手掛けたウォルター・マーチが集い、10年振りに相応しい作品となった。そして一瞬だけマット・デイモンも出演している。

 『コッポラの胡蝶の夢』は幻想的なラブストーリーである。男が死ぬ時、彼は最愛の人を思い浮かべながら逝く、そして彼らは来世でもまた巡り会う。魂は時を超えて1人の人を愛し続ける。この作品は低予算のインディペンデント作品だが、壮大なストーリーである。『タイタニック』の様な大金を注いだ壮大なラブストーリーではなく、仏教的概念も含まれており、精神的に壮大な物語なのだ。

 そして今回のコッポラの作品は非常に複雑さを呈する。しかし、それはあくまで良い意味で。雷に撃たれ若返ったり、輪廻転生、超能力、もう1人の自分等、謎の多いストーリーをコッポラは見事に芸術作品に仕上げている。若い映画監督には成し得ない熟練した監督のみができる技である。もし若い映画監督がこの手の映画を作ったならば、知性に満ち溢れ、静かでエレガントなこの古典的ともいえるこの作風を生み出せなかったであろう。

 またこの映画のポスターを見た際にはきっと、使用されているタイトルに違和感を覚えるだろう。何故かというと、文字が上下逆さまなのだ。それは映画の中で映像としても効果的に使用されており、年が戻るというストーリーを象徴している。

 コッポラは1997年の『レインメーカー』を後に映画界から監督としての姿を消した。彼はワイン作りに興味を持ち、10年をワイン製造に費やした。また娘のソフィア・コッポラが『ヴァージン・スーサイズ』で監督デビューしてからは彼女の映画をプロデュースしている。良いパパである。ソフィアの監督した『ヴァージン・スーサイズ』『ロスト・イン・トランスレーション』『マリー・アントワネット』には全てバックに父コッポラが付いている。それはそれで他人から見ると変な気もするが。

 現在68歳となったコッポラが何故この映画を撮ったのか。時間に逆らい若返るというストーリーはSF映画でよくありそうな話だ。しかし老年に達した今だからこそ、彼は『コッポラの胡蝶の夢』のストーリーに共感したのだろうと推測する。主人公ドミニクは映画の中で若さを取り戻し、自身の研究を追求する。そしてコッポラは若さこそは取り戻せないが、若くして成功を手にし、アメリカ映画界の巨匠と呼ばれる今、彼にとって、自身の原点回帰的意味を踏まえ、インディペンデント作品として、この「若さ」というキーワードを含んだこの作品を撮る事に意味があったのだろう。映画の中でドミニクがこう言うシーンがある。「I am dreaming. It’s like the story of the king who was dreaming that he was a butterfly(私は夢を見ている。蝶になった夢を見ている王の様な物語だ。)」この荘子の思想の様な言葉がコッポラの成功の人生にもシンクロする。

岡本太陽

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