アンダーカヴァー - 岡本太陽

ホアキン・フェニックス主演 本年度の『ディパーテッド』的作品。(55点)

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 昨年公開された映画にマーティン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』という作品がある。今年のアカデミー賞でも作品賞等主要4部門を受賞する等で、記憶に新しい映画である。内容こそは違うが、今年は2007年の『ディパーテッド』と言っていい程雰囲気も良く似た映画が公開された。それは『アンダーカヴァー』という実話を基にした映画だ。

 監督はジェームズ・グレイ。ティム・ロス、エドワード・ファーロングが出演する『リトル・オデッサ』で注目を集めた監督だ。その後はマーク・ウォルバーグ、ホアキン・フェニックス、シャーリーズ・セロンが出演する『ザ・ヤード』という作品も監督している。今回の『アンダーカヴァー』は監督第4作目にあたる。

 今回の映画の主役ボビーには、ジェームズ・グレイの『ザ・ヤード』にも出演したホアキン・フェニックスが扮する。2005年公開の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』以降は出演作品がなかったのだが、今年の秋は2本主演映画が公開された。1本目はこの『アンダーカヴァー』で2本目は『帰らない日々』というドラマ映画だ。『グラディエーター』でアカデミー助演男優賞にノミネートされて以降はリバー・フェニックスの弟というラベルが剥がれ、演技派としての道を歩んでいる。脇を支えるのはマーク・ウォルバーグにロバート・デュヴァル、そしてエヴァ・メンデスだ。マーク・ウォルバーグはホアキン・フェニックス同様ジェームズ・グレイ監督作の出演は2作目である。バート役のロバート・デュヴァルが父、その息子でボビーの兄ジョセフをマーク・ウォルバーグ、ボビーの彼女アマンダをエヴァ・メンデスが演じる。

 ニューヨークはブルックリンのブライトン・ビーチにあるロシア人の経営する伝説的クラブでマネージャーを務めるボビー・グリーンは、警察との繋がりを隠すため、名前を変えて客を接待していた。彼の父、そして兄は警察なのだ。 1988年、ニューヨークでは麻薬犯罪が激化しており、麻薬取り締まりの為にボビーの兄ジョセフがロシアギャングが出入りしているボビーのクラブに抜き打ちで捜査に入る。ボビーもその時に警察に連行されてしまう。この抜き打ち取り締まりの後、ジェセフは何者かによって自宅前にて銃で顔を打ち抜かれてしまう。この事件を受けてボビーは警察に加担するのだが…。

 この映画は観る前から期待はしていなかったのだが、わたしの予想通り特に新しい発見も驚きもない映画だった。というのも映画が始まってからすぐにこの映画がどういう展開になるか読めてしまうのである。ジョセフとボビーはよくありがちな性格が正反対の対立する兄弟という設定であるにも関わらず、ストーリーも悪くはない。ただただ新鮮味が欲しかった感が残る。

 この映画で唯一輝いていたのはホアキン・フェニックスの演技だろうか。マーク・ウォルバーグやロバート・デュヴァル等もいいのだが、ホアキンには勝らない。ボビーの恋人アマンダを演じたエヴァ・メンデスはどうでもいい。映画が地味なだけにセクシー路線の女優で色を添えただけと解釈できるだろう。はじめはタダのビッチに見えてしまうが、実は彼女の役は悪くはない。もっと演技力のある女優を使った方が引き締まった映画になったのではないだろうか。

 わたしがこの映画の中で気に入っているシーンは最後の方にある、草むらでの対決のシーンだ。周りがよく見えず、敵がどこに潜んでいるかわからないという、ヒッチコック映画のクライマックスの様な雰囲気は見事である。この映画は先が読めるもののドキドキするシーンがいくつかある。

 ところで、アメリカ映画にはロシア人は度々登場するが、良い人であったことがまるでない。だいたいは犯罪者、しかも凶悪。ボビーの経営するクラブのあるブライトン・ビーチという地区もブルックリンの端にあり、夏はビーチで多少賑わいを見せるものの、少々寂れた雰囲気を持ち、アメリカにおけるロシア人の地位を表す様な場所である。わたしはロシア人の地位が向上する様な映画が作られないかと常に願っている。

岡本太陽

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