ウォーリー - 町田敦夫

◆愉快なギャグと傑作SFへのオマージュがいっぱい(70点)

 舞台は人類にうち捨てられた29世紀の地球。主人公は700年間、たったひとりでゴミ処理を続けてきたオンボロのロボット、ウォーリー。そんな孤独なロボットの前に、白く輝く最新鋭の探査ロボット、イヴが現れて……。

 序盤は文字通りウォーリーの独り舞台。機械特有の律儀さでゴミを集め、圧縮し、積み上げるロボットのルーティーンワークが一切のセリフ抜きで描かれる。退屈そうだって? とんでもない。昆虫と絡んだり、おかしなゴミをもてあそんだりするウォーリーの行動はギャグの宝庫。ヒューマノイド型でさえないロボットが、その無骨な体で見事に“感情”を表現しているのには舌を巻く。

 イヴが“降臨”してからがまた爆笑。一目惚れしたウォーリーはどうにか彼女の気を引こうと努めるが、任務に夢中のイヴは鼻も引っかけない――どころかキャノン砲をぶっ放す。パターンとしては「労働者階級の男の子&良家の女の子」という青春物の定番的な展開だ。とはいえ本作を単なるロボット版ボーイ・ミーツ・ガールの物語と思って観ていると、後半のストーリーの膨らみに度肝を抜かれることになる。監督のアンドリュー・スタントンは、製作に入る前にたくさんのSF映画を見直したという。ぜひ過去の傑作のモチーフを、本作の中に探してみてほしい。

 イヴを追ってウォーリーがたどり着くのは、地球を捨てた人類が暮らす巨大な宇宙船だ。ウォーリーはそこで、愛するイヴに任務を完遂させようと“命”をかけて奮闘する。それを邪魔しようとする勢力との戦いは『2001年宇宙の旅』にも連なるSF界の大テーマ。ウォーリーの愛ゆえの献身を、人類と地球全体の未来に直結させた脚本の力業には感服した。

 ちなみに宇宙船に住む人類は、いつか地球を再生させる夢を持ちながら、安逸な宇宙暮らしに流され、自分の足では歩けないほど肥え太っている。本当は生きているとは言えないような状態なのに、生きているのだと思わされている大衆――と来れば、思い出すのは『マトリックス』だ。人類に覚醒を促すウォーリーは、キアヌ・リーブスが演じた『マトリックス』のネオにもなぞらえられるだろう。とすれば、その導き手となったイヴはトリニティか。ネオが1度命を失ったように、ウォーリーも最後に機能を停止する。だがネオにトリニティがいたように、ウォーリーにはイヴがいる。先が読めても、なお感動を誘う終幕に素直に身を委ねたい。

町田敦夫

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