ウォーリー - 岡本太陽

地球上でたった1人の孤独なロボットに、700年後突然恋が舞い降りる。(90点)

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 本年度のアカデミー賞で『レミーのおいしいレストラン』は見事長編アニメ賞を獲得した。その作品はピクサースタジオ制作史上、ナンバーワンの呼び声の高い出来だったが、この夏それを凌ぐ素晴らしいピクサースタジオ制作アニメが誕生した。その『ウォーリー(原題:WALL・E)』は、ある掃除専用ロボットが主人公で、前半はほとんど台詞すらない驚くべき映画なのだ。

 2100年、地球上にあるほとんどのサービスを供給する会社 BnL(Buy ‘n Large)は世界政府となった。そして人類は消費ばかりし、地球を汚染し続けた。BnLはゴミだらけになり、汚染のため住めなくなった地球をしばらく離れるためいくつかの宇宙船を作り、人々を乗せ宇宙に旅立った。その際に、地球を掃除するために残されたのは何千ものウォーリー/WALL・E(Waste Allocation Load Lifter Earth-Class)という掃除マシーン。それから掃除をしてもしても地球は一向に回復する気配がないまま700年の時が経った。そこには皆故障してしまい、たった1体のウォーリーだけが掃除を続けていた。しかし、ある時、地球に来客がやって来て、ずっと孤独だったウォーリーに変化が起こる。彼は地球に降り立ったその白くて滑らかな外見のロボットに興味を持ち始め…。

 とにかく、この孤独なロボットが活躍するピクサーが創り上げた最新作のヴィジュアルには驚きの連続。特にゴミだらけになった地球の映像は美しくも切ない。『WALL・E』の監督を務めるのはアンドリュー・スタントン。この映画の構想は実は脚本で参加した『トイ・ストーリー』以前からあったそうで、10数年もの間眠っていた。その後、スタントンは『トイ・ストーリー2』の脚本や『モンスターズ・インク』のプロデューサー等を務め、あのメガヒット作品、『ファインディング・ニモ』で監督デビュー。この作品をアカデミー長編アニメ賞に導いた。彼にとって2008年の『ウォーリー』は絶好のタイミングでの制作だったのだ。

 物語の主人公の掃除用ロボットウォーリーは、機械的な音を発したり、自分の名前を言う事は出来るが、基本的には会話は出来ない。ゆえに、人間が登場する後半まではロボットの動きだけで心情を表現している。そこで制作チームが参考にしたのがチャップリンの映画。台詞がなくともここまで正確に心情を表現する事が出来るのだと改めて感じさせられる。よって、チャップリンの映画の様に、『ウォーリー』も普遍的な物語なのかもしれない。

 ウォーリーははじめはただのマシーンだったのだが、700年もの間1人きりでゴミ掃除をし、彼の住まいにあるビデオプロジェクターで1969年の映画『ハロー、ドーリー!』を観ている間に感情というものが芽生えた。また、それと同時にゴミ処理だけでなく、ゴミの中から宝物を拾うという習性も身に付いた。電球や、ルービックキューブ、ジッポライター等、気になる物は集めて自分のコレクション棚に並べている。こんな人周りにもたくさんいそうだ。それからウォーリーは太陽の光を受けて起動するのだが、その時の起動音がマッキントッシュと同じなのがおかしい。ウォーリーはマッキントッシュの様に愛着の湧いてしまう様な愛おしいキャラクターだ。

 ウォーリーは『ハロー、ドーリー!』に登場するシーンを観て、愛おしい人と手をつなぐ事を夢見ている。そんな彼の前に現れたのはイブ(EVE)というウォーリーとは全く姿も習性も違うロボット。彼女は空も飛ぶ事が出来、その上、右腕に銃の様なものも装着されている。彼女が銃をぶっ放す時にウォーリーがビクビクしている姿がなんともかわいらしい。まるで、出来る女と、ダメ男のロマンティック・コメディを観ている様だ。

 また、このストレートな愛を表現するシンプルなラブストーリーを彩るのはルイ・アームストロングの『La vie en rose』と『ハロー、ドーリー!』からの『Put On Your Sunday Clothes』だ。どちらも心に残ってしまう印象的な曲であると同時に、ウォーリーのイブに対するピュアな感情を表現する重要な曲でもある。

 『ウォーリー』の物語の中で人間はゴミばかりを生み出し、地球を住めない環境にし、捨てた。この映画は消費社会や資本主義に対する批判を含み、また、エコの観点からも興味深く鑑賞が出来る。しかし、その事以外にも人間に警告の鐘を鳴らしている点がいくつかある。人間は地球を捨て宇宙で生活するようになり、歩行をする必要がなくなった。その上、彼らが暮らす宇宙船内では遊んでばかりで、怠惰から肥満が蔓延している。これは人事ではない。上に挙げた2つの環境破壊と肥満問題は現代社会で実際に起こっている事なのだ。それから、2800年代はロボットと人間が共存しており、物語の終盤では『アイ・ロボット』の様な展開になる。この様に人間が恐れている事を描き、感情移入しやすい物語にしている点は非常に賢い。

 『ウォーリー』にはいくつもの要素があるのだが、大きく分けると2つの側面を持った作品である事が分かる。それはシンプルなラブストーリーであるという面と、「やり直し」を描いているという面だ。特に後者は人間のやり直しを描いている。人間よりも人間らしいウォーリー、彼の一途な思いが人間の中に眠っている感情を再び蘇らせる。そして、人間達は再び地球を救うために立ち上がるのだ。

 『ウォーリー』から学ぶ事はたくさんある。この物語は地球再生も描いており、何百年の後の荒廃した地球でさえ修復しようがあるのだから、現在住む事が出来る地球環境はわたしたち次第で守れるのではないか、そのためにはわたしたちに今何が出来るかを問いかける。ただただかわいらしいキャラクターが活躍するアニメではなく、次世代的な映像の美しさと共に、シリアスなテーマをわたしたちに見せるこの映画は人類が創り出した奇跡的な1作だ。また、シガニー・ウィーバーが声でカメオ出演をし、人類の乗っている宇宙船の船内放送を『エイリアン』の中に登場するものと全く同様にやっているので、それも是非聞き逃さないようにしたい。

岡本太陽

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