TRANSSIBERIAN - 岡本太陽

『マシニスト』のブラッド・アンダーソン監督最新作のスリラー!(65点)

 『セッション9』や『マシニスト』の監督として知られるブラッド・アンダーソン。彼は1998年の『ワンダーランド駅で』で注目され、主にサスペンス・スリラーを得意とする。特に『マシニスト』ではクリスチャン・ベールの激痩せが話題になり、この作品は強烈な印象を残した。そのアンダーソン氏が2004年の『マシニスト』以来、新しい作品を発表した。『TRANSSIBERIAN』と呼ばれるこの映画には、ウディ・ハレルソン、エミリー・モーティマー、ベン・キングスレーが出演している。『マシニスト』のヒットが今回の豪華出演陣を実現させた。

 シベリア鉄道。それはウラジオストクからモスクワまで通じる鉄道だ。モンゴルや中国からもその鉄道に通じる電車が出ている。アメリカ人夫婦ロイとジェシーは子供達を助けるために中国を訪れていた。その後、彼らはシベリア鉄道に乗ってモスクワを目指すが、その電車の中でアビーとカルロスというカップルに出会う。そしてロイとジェシーの旅は暗い空の下の雪世界で急展開を迎えるのだった…。

 本作はここ10年程主演作がなかったウディ・ハレルソン主演作。クセのある役を演じる事が多いが、この映画での役は特にクセは強くない。誰でもよかったと感じられる程、普通の気さくなアメリカ人の夫ロイを演じている。ロイの妻ジェシーはイギリス出身の女優エミリー・モーティマーが演じており、彼女が恐怖のどん底にハマっていく姿が印象的だ。それは時に苛立たしくも感じられる。

 またロイとジェシーが電車の中で出会うスペイン人男性カルロスは『デビルズ・バックボーン』や『バンテージ・ポイント』のエデュアルド・ノリエガが演じている。カルロスはセクシーで危険な香りを醸し出し、ジェシーはロイとは違う彼に引き寄せられてしまう。それからベン・キングスレーが電車の中で麻薬捜査を行うロシア人刑事を演じているが、この役が不気味で怖い。クセの強い役を演じることが多い彼だけにこの役にも妙にハマっている。彼は今年、映画出演で忙しく、なんと今年だけでも5つの公開作を持つ。その他にはケイト・マラ、トーマス・クレッチマンが出演している。

 ロイとジェシーの旅はアビーとカルロスに出会い一変する。特にジェシーがカルロスに引かれてしまうのが物事をより複雑化する。そしてロイとジェシーは恐ろしい事件に巻き込まれてしまうのだ。この物語は半分が電車の中で、外へ出ても極寒という逃げ場のない恐怖が魅力だ。『TRANSSIBERIAN』は『セッション9』や『マシニスト』同様、切迫感すら感じるブラッド・アンダーソン監督の映画らしさを押し出した作品となっている。

 またクラシックなサスペンス・スリラー的要素も持ち合わせており、時にアルフレッド・ヒッチコックの映画を連想させる。ただユニークな前作『マシニスト』に比べると、出演者は豪華になったが、作品のインパクトには欠けてしまう。ロイの妻ジェシーは精神的に極度のストレスを感じ、どんどんと追い詰められて、観ている側もそれを体感出来、ハラハラさせられてしまうが、物語自体にはとくに新鮮味がないのが弱点。最後にドンデン返しがあるのが救いだ。『マシニスト』には可笑しくて笑ってしまうシーンがいくつかあり、それが人があの映画を好きになった理由の1つでもあった。『TRANSSIBERIAN』にも多少ユーモアを持たせればよりオリジナルで面白い作品になっていたに違いない。

岡本太陽

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