TOKYO! - 福本次郎

街の魅力や住む人々の人情を描くわけではない。東京は日常を乖離した出来事を紡ぎだす不思議なパワーを持った都市、最初は馴染めなくても、居場所を見つけてしまえば他人との関係を築くのもまた容易であると映画監督たちは語る。(60点)

 街の魅力を伝えるわけではなく、住む人々の人情を描くわけでもない。東京は日常を乖離した出来事を紡ぎだす不思議なパワーを持った都市なのだ。椅子になる女、下水道に住む正体不明の男、引きこもりの男という3人の男女の物語を通じて、個人が他者とかかわりあう過程で起こるさまざまな軋轢を描く。最初は馴染めなくても、居場所を見つけてしまえば他人との関係を築くのもまた容易であるとこれらの映画は語る。

 ミシェル・ゴンドリーの「インテリア・デザイン」は、映画監督を目指すアキラに付き添って東京にやってきた恋人のヒロコが、自らを椅子に変身させることで「誰かの役に立つ」充実感を得る。何ひとつとりえがなく、東京に出てきても失敗ばかりのヒロコは友人や恋人にまで疎んじられ、胸に穴が開くことでその気持ちを具象化するシーンがシュールだ。ギタリストに拾われて彼の愛用の椅子として見守ることで幸せをかみしめる、恋に発展しそうな予感で終わらせるのがキュートだ。

 レオス・カラックスの「メルド」はゴジラのテーマにのってマンホールから現れた怪人がいたずらをして回り、やがて地下で見つけた手榴弾を使って渋谷で爆弾テロを起こす。社会に不満を募らせた男が狂気に走るという構図は、昨今日本でも多発する通り魔事件を連想させる。彼の言語は特殊で、自分の考えをうまく言葉にできない人間が孤独のスパイラルに落ちていく心理がよく表現されている。

 ポン・ジュノの「引きこもり」は外界との接触はデリバリーの注文と受け渡しだけという引きこもり男が、地震をきっかけにピザ配達婦に魅かれ始める。ピザ店を辞めた彼女を探しに11年ぶりに家の外に出てみると、街中の人が皆引きこもりになっていたというブラックジョークだが、コミュニケーションをネットでしかとろうとしない現代人への皮肉なのだろう。

 いずれの作品もイマジネーションを刺激するのだが、やはりグリーンのスーツに長く伸びたあごひげとつぶれた片目という奇抜な外見を持った男を主人公にした「メルド」がいちばんエキサイティングだ。憎むべきテロリストでありながら彼が内包する寂寥と世間からの疎外感が共感を呼ぶが、ラストでもうひとひねりして、このエピソードは文明批評などという大げさなものではないとゴジラの叫び声でオチをつけるあたり、最高にエスプリが効いていた。

福本次郎

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