日本に憎しみを抱く米国人が、日本人の優しさと誠実さにわだかまりを解いていく。人と人のつながりの中で命が受け継がれていくことを実感し、過去より未来を明るいものに変えていこうと態度を変化させる過程がすがすがしい。(60点)
日本に憎しみを抱くアフリカ系米国人が、日本人の優しさと誠実さに触れていくうちにわだかまりを解いていく。不機嫌な主人公が人と人のつながりの中で生命が受け継がれていくことを実感したときに、忌まわしい過去よりもこれからを明るいものに変えていこうと態度を変化させる過程がすがすがしい。父を殺され息子の命を奪った日本人、だが、彼の息子が愛し、夢をかなえ、その証を残したのもまた日本人。コミュニケーションがお互い理解を深め、国籍や人種、言葉やカルチャーの壁を越えた心の交流を促進することを描く。
最愛の息子・ミッキーを亡くしたダニエルは、生前ミッキーが英語と美術を教えていた高知で、彼が遺した絵を回収しようとする。世話係の原は戸惑いながらも通訳するうちに、ミッキーの恋人だった紀子と黒い肌の赤ちゃんの存在を知る。
ダニエルはまだ黒人が差別されていた時代を知る世代、それが無理解と無知から来るものだと知りながら、自身も日本人に対して偏見を持っている。空港に降り立ったときのダニエルはまるで敵地に乗り込んだかのよう。出迎えた原たちに対する振る舞いは初対面であるにもかかわらず、彼らの好意を平気で踏みにじる。原の表情は、感情を抑え言いたいことを我慢する日本人の特徴がよく現れていた。ただ、misono扮するテンションの高い助手が紀子の父親の家をダニエルに教えるシーンがあるが、紀子の父の気持ちを原たちの会話から知っているはずなのに、なぜ余計なことをするのだろう。このバカ女が作品の品格を貶めていた。
ダニエルは原にミッキーゆかりの場所を案内されるうちに、彼がいかに地元の人々にとけこんでいたかを知る。さらに紀子とその娘・マリアに出会い、マリアこそ自分の未来と確信する。苦虫を噛み潰したようなダニエルの顔が、やがて日本人と日本文化に敬意を持ちはじめ、最後には高知に永住する決意をするなどすっかり親日家になってしまう様子がほほえましかった。
(福本次郎)