どこかレトロな雰囲気が魅力的(55点)
冒頭からテンポのいい音楽でのせられる、インターネットシネマの劇場版。どこかレトロな雰囲気が魅力的だ。主人公は暗号の天才“探偵507”。依頼を受けて中国の上海に飛んだ彼は、今まで見たことのない配列の暗号解読に挑むが、そこには、旧日本軍の財宝にまつわる哀しい事実が待っていた。上海マフィア、怪しげな情報屋、美しい歌姫、謎の狙撃手などが次々に登場し複雑に展開するとみせかけて、謎解きの妙技はあっさりと描かれる。見所は林海象監督特有のノスタルジックな世界観だ。探偵という職業にこだわる林監督の美意識が、観客を過去へと引きずり込む。作り物めいた異国情緒も狙ったものだろう。浮世離れした風貌の尾上菊之助はピタリとハマッたが、松方vs宍戸が師と弟で対決するのはちょっと疑問。
(渡まち子)