一瞬のエモーションとその後の絶望を描く物語(60点)
80年代の英国を彩った、サッチャー政権、フォークランド紛争、スキンヘッド・カルチャーなどの事件やアイテムが当時の音楽とともに活写される。なりゆきで不良グループに入ったいじめられっ子のショーンが知る、一瞬のエモーションとその後の絶望を描く物語だ。行き場を失った若者たちは、仲間とツルんだり、流行のファッションに身を包んでも、心の充足は得られない。主人公ショーンの虚しさを表すのが、劇中に二度登場する、朽ちたボートだ。骸骨のようなその舟の中ではたして未来は見えたのか。監督のシェーン・メドウズは、ケン・ローチやマイク・リーの系譜の作家。二人が、主に労働者階級の大人のやるせなさを描くとしたら、メドウズは若者の焦燥感を描写する。そこには未来に希望を持つ力が残っている分だけ軽味があった。