◆芥川龍之介「藪の中」を「SFサムライ・フィクション」の中野裕之監督が映画化。時代劇に舞台を借りた現代劇だが、何をやりたいのかよく分からない失敗作となった(49点)
芥川龍之介の小説「藪の中」の映画化では、黒澤明「羅生門」(1950)、三枝健起「MISTY」(1997)などが思い浮かぶ。本作は同じ「藪の中」を原作としながら、この2作とは全く違う独自のストーリーを展開している。
◆芥川龍之介「藪の中」を「SFサムライ・フィクション」の中野裕之監督が映画化。時代劇に舞台を借りた現代劇だが、何をやりたいのかよく分からない失敗作となった(49点)
芥川龍之介の小説「藪の中」の映画化では、黒澤明「羅生門」(1950)、三枝健起「MISTY」(1997)などが思い浮かぶ。本作は同じ「藪の中」を原作としながら、この2作とは全く違う独自のストーリーを展開している。
敵役の田中圭が迫力不足でミスキャスト(45点)
多襄丸(たじょうまる)とは、芥川龍之介の短編「藪の中」に出てくる盗賊で、黒澤明の「羅生門」にも登場するキャラクター。原案は同じだが、まったく別の視点から描いた異色時代劇だ。名門・畠山家の次男・直光は、陰謀により家を追われてしまう。将軍の酔狂や、兄、家臣、許婚の裏切りにショックを受けながらも、直光は、大盗賊・多襄丸からその名前と“浪切の剣”を受け継ぐことに。だが、新しい人生を生きようとした彼には、さらに過酷な運命が待っていた。
小栗の好演が光るが(55点)
芥川龍之介の『藪の中』は、いうまでもなくリドルストーリーの傑作で、長い間ミステリファンを魅了してきた。リドルストーリーとは、結末がはっきりしない、させない物語のことで、本作の場合も、真相はこうだ、いやこいつが嘘を言っているんだと、喧々諤々の議論を読者間に巻き起こしつつ今に至る。
友情が欲望に蝕まれ、信頼が憎しみの虜になり、愛が苦悩に姿を変える過程で、権力と財産を前に陰謀と裏切りが複雑に交叉する。緑深い幽玄の森の奥で繰り広げられる男女の会話が、深層心理をのぞき見るような緊迫感を醸し出す。(50点)
友情が欲望に蝕まれ、信頼が憎しみの虜になり、愛が苦悩に姿を変える。権力と財産を前に、陰謀と裏切りが複雑に交叉し、まっすぐに進もうとする者の思いは踏みにじられる。映画は高貴な家系に生まれた若者がたどる波乱万丈の人生を背景に、自由に生きるのは己の信念を貫き通すということであると訴える。緑深い幽玄の森の奥で繰り広げられる男女の会話が、深層心理をのぞき見るような緊迫感を醸し出し、先の読めない展開は乱世の人々の暮らしを象徴しているようだ。