リクウァイ監督のアート嗜好が色濃く出た作品(60点)
オダギリジョーが主演だが、世界各国から多才なキャストが集まったことで、無国籍なムードが漂った。育ての親である中国人ユダとブラジルの闇社会で生きるキリンは、日系ブラジル人。ある時ユダの命が狙われたことでキリンもまたマフィアの抗争に身を投じることになる。血よりも濃い義父と息子の関係を軸に、クライム・ムービーとして物語は進むが、杯を逆さにしたような塔の上での乱闘のあたりから幻覚のような気配が漂い、現実感が急激に薄れていく。やがて二人が出会ったジャングルへ戻る展開は、因果応報のギリシャ悲劇のようだ。リクウァイ監督のアート嗜好が色濃く出た作品で、スタイリッシュなミュージックビデオ・クリップ風に見ると楽しめる。
少しくすんだようなカラーは主人公の心象風景を象徴しているかのよう。雑多な混沌という限られた選択肢の中で生きていかなければならない男の、絶望するには早すぎるが希望を持つほど甘くない現状を、カメラは冷徹に見つめる。(40点)
少しくすんだカラーは主人公の心象風景を象徴しているかのよう。日系ブラジル人でありながら華僑に育てられ、サンパウロのアジア人街の若手リーダー的存在。多種多様な人種が入り交じる街で民族のアイデンティティを持たず、この雑多な混沌が故郷で、他に行くあてもない。当然まともな職業には就けず、同じ境遇の人々をまとめて闇商売に手を染めている。限られた選択肢の中で生きていかなければならない男の、絶望するには早すぎるが希望を持つほど甘くない現状を、カメラは冷徹な視線で見つめる。
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