◆寡黙なこの内容は、作品としての強さはないのだが見終わった後に余韻となる(50点)
やがて消えてゆくであろう美しい場所を巡る静かなドキュメンタリーだ。ナレーションやBGMを排除した作りは、一般観客に訴える力は削がれているものの、その分、作り手の“本気”を感じる。気候変動による悪影響を直接受ける、南太平洋のツバル、イタリアのベネチア、アラスカのシシマレフ島を舞台に、そこで暮らす人々、とりわけ子供たちにスポットをあてながら、今やグローバルな懸案事項になっている地球温暖化という問題を無言で訴えていく。
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◆次第に水浸しになるサンマルコ広場、即席の高架歩道を組み立ている間にも海水は街中に侵入し、市民はゴム長靴にはきかえて対応する。水没しつつあるベネチア、もはや慣れっこになっているのかその光景は日常の延長のようだ。(50点)
ゴンドラに乗った歌手がギターの伴奏で高らかに歌いあげ、宮殿をそのまま改装し本物の美術品に囲まれたホテルのロビーからは歴史の重みが醸し出され、カーニバルの季節には仮面に素顔を隠した男女がダンスに興じる。そんな中世の街並みと雰囲気を残す水の都にも警報と共に高潮が押し寄せる。次第に水浸しになるサンマルコ広場、街の人々が即席の高架歩道を組み立ている間にも海水は街中に侵入し、ホテルや商店まで蝕むが、市民はゴム長靴にはきかえて対応する。水没しつつあるベネチア、もはや彼らには慣れっこになっているのか、その光景はどこか日常の延長のようだ。破滅は突然やってくるのではなくじわじわと予兆をはらんで忍び寄ってくる、危機感の希薄さが逆にその恐ろしさを増幅する。
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