殺人事件を12人の陪審員が審議するうちに、最後には理性が勝利するという構造は同じ。だが、過去の名作をなぞるだけでなく現代の事情に合わせて換骨奪胎して同時代性を持たせるという、リメイクのお手本のような作品だった。(80点)
殺人事件容疑者の少年の有罪無罪を12人の陪審員が審議するうちに、圧倒的な有罪多数から論理的に話し合ううちに1人また1人意見を翻し、最後には理性が勝利するという構造はシドニー・ルメット版と同じ。そこにチェチェン問題や、法より暴力が横行するロシアの現状を盛り込んで恐るべき緊張感を生み出す。あるときは芝居を見ているような長回しのセリフ、あるときはアップと、ほとんどが閉鎖空間で進行する物語にアクセントをつける一方、少年の記憶をフラッシュバックさせてオリジナルを凌駕する社会性を生み出している。