用心棒が子供たちを移送中に「みなしごのバラード」を口ずさむ。その歌詞の如く、あたたかい人の情けなどとは無縁に育ち、今ではボスのために子供たちを搾取する側に回っている。悲劇の悪循環を表現する見事なワンシーンだ。(70点)
売春宿の用心棒が商品となる子供たちを移送中に「みなしごのバラード」を口ずさむ。彼もまた幼いころに売り飛ばされ、数え切れないほどの客を相手にしたのだろう。その歌詞の如く、あたたかい人の情けなどとは無縁に育ち、今ではボスの手先となって自分が子供たちを搾取し、虐待する側に回っている。過去から受け継がれた悪循環が未来へ連鎖していくという悲劇をワンシーンで表現する見事な演出だ。目の前の子どもを助けて良心を満足させるのか、大局を俯瞰するのか。そんな日本人同士の葛藤が偽善に思えてくるほど、当事者であるタイ人には児童買春は日常の一風景になっている。ここでは人間の値段は驚くほどに安いのだ。