死んだ人間の怨念なのか、トラウマが生んだ幻影なのか。地方都市でくすぶっている人々の元に同級生が帰ってくる。映画は、少年時代に封印した記憶というパンドラの箱を開けた男たちが遭遇する災難と不条理をポップな感性で描く。(50点)
© 2009『鈍獣』製作委員会
死んだ人間の怨念なのか、トラウマが生んだ幻影なのか。地方都市でくすぶっている人々の元に、東京で名を上げた同級生が帰ってくる。別に成功を見せびらかすわけでもなく、旧交をあたためようとしているだけなのに、その男の言動にいちいち過剰反応してしまう。苦い過去はおくびにも出さず、それがかえっていじめていた側には不気味に思えてくる。映画は遠い昔に封印した記憶というパンドラの箱を開けてしまった男たちが遭遇する災難と不条理をポップな感性で描く。
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激しく好みが分かれるだろう(50点)
© 2009『鈍獣』製作委員会
クドカンらしい奇想天外なファンタジック・ミステリーだ。失踪した作家凸川(でこがわ)を探して編集者の静が彼の故郷を訪ねるが、そこでは凸川の同級生たちがまったく要領の得ない話をするばかり。常識が通用しないその田舎町で起こった悲喜劇とは? 殺しても殺しても死なない“でこやん”を不思議な明るさで演じる浅野忠信が面白い。とりあえずテーマは友情だが、そこには互いを傷つける毒も含まれる。元が舞台だけあってテンションの高さはハンパではなく、奇妙な登場人物や極彩色の画面構成は、激しく好みが分かれるだろう。個人的には共感できる部分はほとんどなかったのだが「人間は鈍い獣だ」とのセリフはなかなか深い。冒頭で流れるラテン系サウンドが、ブラックホールのような町のダークな笑いの空気を象徴している。