蟹工船 - 福本次郎
むき出しの鉄の壁に圧迫されるような薄暗い部屋で、太い管の中だけが独りになれる唯一の空間。作業は完全な流れ作業の中の単純な肉体労働。「地獄さ行ってくるべ」という有名な原作の書き出しを見事なヴィジュアルで再現する。(50点)
© 2009「蟹工船」製作委員会
窓はなく、むき出しの鉄の壁に圧迫されるような薄暗い部屋で、積み上げられた太い管の中だけが独りになれる唯一の空間。作業場で与えられる仕事は、考えることが一切不要な完全な流れ作業の中の単純な肉体労働。監視の目は厳しく手を休めると容赦なく杖で殴られる。凍てつく海の上に浮かぶ工場船の労働者に与えられた劣悪な環境は、まるで脱出不可能な強制収容所のようだ。映画は、「おい地獄さ行ぐんだで!」という有名な原作の書き出しを見事なヴィジュアルで再現する。
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蟹工船 - 渡まち子
演技が軽すぎて、限界ギリギリの絶望は伝わってこない(55点)
© 2009「蟹工船」製作委員会
言わずと知れた小林多喜二の傑作小説の映画化だが、ポップな地獄絵図とでも呼びたいライトな「蟹工船」に仕上がった。カムチャッカ沖の船上で蟹の缶詰を加工する蟹工船で働く労働者たちが、過酷な重労働と横暴な支配者に対してついに立ち上がる姿を描く物語だ。ユーモアを漂わせ、シュールな映像を作り出したのは面白いが、演技が軽すぎて、限界ギリギリの絶望は伝わってこない。また、共産主義のソ連の船上にユートピアを見るのなら、時代設定を小説と同じにすべき。ただ、どこか線が細い西島秀俊の悪徳監督ぶりは意外にもハマッていて、原作の時代と現代との接点を感じさせた。しかしこの暗くてやるせないプロレタリア文学が再ブームになってしまう現代という時代は、やはり不安の中にあると言わざるを得ない。
蟹工船 - 前田有一
監督の人選ミス(20点)
© 2009「蟹工船」製作委員会
小林多喜二によるプロレタリア文学の傑作『蟹工船』は、最近ブームとなり本作制作のきっかけとなった。年越し派遣村がニュースになったとおり、単純労働者のあまりの待遇の過酷さから、この原作に共感する若者が多いのだという。
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