城が出来上がっていくプロセスがすこぶる楽しい(65点)
© 2009映画『築城せよ』製作委員会
ブレないと評判の戦国武将が大ブーム。そんな流れにのった快作だ。観光地にもならず工場誘致さえキビしい現代の田舎町に、400年前の戦国武将の亡霊が蘇り、悲願の築城を宣言する。廃材のダンボールでの城作りというムチャな計画に巻き込まれ、いつしか魅了されていく建築学科のナツキや町の人々と、武将の思いがひとつになり、城が出来上がっていくプロセスがすこぶる楽しい。ただ、材料集めの工夫は丁寧だが、城作りの細部の描写が雑なのが残念。特に天守閣としゃちほこの製作はものづくりの喜びを謳う物語のカギだけにきちんと描いてほしかった。すばらしいのは情けない公務員と尊大な武将の二役を演じる歌舞伎役者の片岡愛之助。品格のある声と立ち居振る舞いが美しく、ありえない物語に説得力を与えている。
昇りかけた朝日を反射して黄金に輝く天守閣。それが美しいのは威容から来るのではなく、築城に参加した市民・学生・武将たちの夢を乗せているから。みんなで力を合せ、段ボールの城を完成させるという目標に向かって突き進む。(50点)
© 2009映画『築城せよ』製作委員会
昇りかけた朝日を反射して黄金に輝く天守閣。それが美しいのは石垣の上に建てられた威容から来るのではなく、築城に手を貸した市民・学生・武将たちの夢を乗せているから。すぐに壊れてしまうと分かっていても、みんなで力を合せ段ボールの城を完成させるという目標に向かって突き進む、大変だけれど楽しいお祭り騒ぎ。その過程で意見が分かれていた小さな街も、自分たちが本当に大切なものは何かに気づき、指導者たちも住民の意見を無視してまで事業を推進することに疑問を感じ始める。上から目線の利益誘導に頼るだけでなく、納税者が積極的に参加できる街おこしが、さびれた街に活気を取り戻す秘訣だ。
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ダンボールでお城を作ってしまうとは(55点)
© 2009映画『築城せよ』製作委員会
古波津陽(こはつよう)監督が、わずか300万円で作った本作のオリジナルは、意外なことにアメリカ(サンフェルナンドバレー国際映画祭)で高く評価された。そこで、もっとお金をかければよくなるはず、と考えた日本のプロデューサーの尽力により、このたび製作費3億円でリメイクされることになった。まさに、映画界のわらしべ長者である。
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◆奇想天外なアイデアを実現させた企画にまずは拍手
舞台は2009年の日本。ある夜、過疎の町・猿投(さなげ)に、かつてこの土地を治めていた恩大寺(片岡愛之助)ほか2名の戦国武将の霊が現れる。彼らは今から約400年前に、自分たちの城を完成させることがきないまま無念の死を遂げていた。そんな元領主の「築城せよ!」の号令により、段ボールで城を作るという無謀なプロジェクトがスタート。建築学を専攻する大学生ナツキ(海老瀬はな)が棟梁になって築城を進める。ところが、築城を快く思わない町長(江守徹)や役場の人間が、城攻めの計画を練り始め……。
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