誕生の瞬間を再現すれば宇宙が作れるという仮説を立てた主人公が、天才少女と共に研究を重ねるうち、人間が内包する宇宙の広大さに気付く。調和の取れた宇宙よりも、矛盾と混沌に満ちた感情のほうが謎と美にあふれているのだ。(50点)
宇宙に存在するあらゆるものは対称で成り立っている。正と負、物質と反物質、引力と斥力。それでは「対称」の対称は「非対称」なのか。すべては「対称」と定義すると、そこに「非対称」を内包するというパラドックス。その二律背反があったからこそ物質は消滅せずに残り、結果として星や生命、それらを観察し考える人類が生まれた。宇宙誕生の瞬間を再現すれば宇宙ができるのかという壮大な思い付きを口にした主人公が、天才少女と共に研究を重ねていく過程を通じて、人間が心に内包する宇宙の広大さに気付く。規則正しく調和の取れた宇宙よりも、矛盾と混沌に満ちた感情のほうが謎と美にあふれているのだ。