母娘の会話、食卓で交わされる言葉の数々、夫婦・親子の関係の中で、あらゆるセリフが生活に根ざしたリアリティにあふれている。日常を覗き見しているような錯覚を覚えるほど登場人物の気持ちに観客を接近させる脚本は見事だ。(50点)
ディテールの丁寧さが光る秀作ホームドラマ(75点)
© 2008『歩いても 歩いても』製作委員会
台所での母娘の会話、3世帯がそろった食卓で交わされる話題の数々、さらに夫婦・親子といった関係の中で、登場人物がのセリフのすべてが生活に根ざしたリアリティにあふれている。食材の選定に始まって、思い出のアルバムやレコード、老親介護や嫁が感じる居心地の悪さ。一見開け放たれたこの家の居間のようにオープンだが、彼らの心には、家族だから言えることと家族だからこそ言えないことが幾重にも混ざり合って鬱積している。穏やかな夏の日、老父母に会いに行くのが義務化して気が進まない主人公に共感するうちに、日常を覗き見しているようかのような錯覚を覚えるほどキャラクターの気持ちに観客を接近させる脚本は見事だ。
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ディテールの丁寧さが光る秀作ホームドラマ(75点)
© 2008『歩いても 歩いても』製作委員会
ディテールの丁寧さが光る秀作ホームドラマ。長男の命日に集まった家族の一日を描く物語だ。食事、お墓参り、昔話と、特別なことは何もないが、それぞれの心のわだかまりを絶妙な会話で描く。特にどっしりと存在する母親役の樹木希林の、辛らつでユーモラスな演技が秀逸。コンプレックスとプライドが混じる主人公役の阿部寛も好演だ。反目も愛情もすべて含め、家族の歴史は重ねられる。本音を語るときに多用する横顔のショットが印象的だ。
是枝裕和監督の「あるある」ホームドラマ(60点)
© 2008『歩いても 歩いても』製作委員会
カンヌ国際映画祭最優秀男優賞をとった「誰も知らない」に続く是枝裕和監督最新作は、ある家族の一日を描いた現代劇。たいした事件が起こるわけでなく、面白いストーリーがあるわけでもないのに、その人間観察力の鋭さだけで2時間持たせる力技には舌を巻く。
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