バーミヤンの仏像が破壊される映像が象徴的(70点)
「自由になりたいなら死ね」。これほど悲痛な言葉があろうか。しかもそれは“戦争ごっこ”という遊びの中で幼い子供の口から出たものだ。やるせないというより背筋が凍る思いである。アフガニスタンに住む6歳の女の子バクタイが、勉強したいと強く願い、男の子の妨害にも負けず、川向こうの学校を目指して奮闘する。ハナ・マフマルバフ監督のまなざしは、無垢な子供の心情を丁寧に描きながら、戦争の悲劇や不条理を照射して、鋭さをみせる。最初と最後に映し出されるバーミヤンの仏像が破壊される映像が象徴的だ。タリバンの残党の暴力は未だに消えない。だが、たとえモニュメントは壊れても、バクタイのように大人にもいじめっ子にも決して屈しないたくましい少女の存在こそが、アフガンという国の希望に思えた。
子供は大人を映す鏡だ。少年たちはタリバンと名乗り、木切れで少女を脅し無関係な少年をいじめる。イスラム原理主義者の名を借りたタリバンのゴロツキがいまだに市民生活を脅かしている現状を、子供たちの戦争ごっこで再現する。(70点)
子供は大人を映す鏡だ。武器を持たぬものを力ずくでねじ伏せ、気に食わないものは容赦なく処刑する。少年たちは自らタリバンと名乗り、木切れで少女を脅し無関係な少年をいじめる。イスラム原理主義者の名を借りたタリバンのゴロツキどもが、いまだに勢力を保ち市民生活を脅かしている現状を、映画は子供たちの戦争ごっこで再現する。学校へ行こうとするだけで処刑を言い渡し、1人で歩いていると米国のテロリストのレッテルを張る。子供が子供に対して「自由になりたいなら死ね」というセリフが、アフガニスタンという国の現在を物語る。
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◆戦争やテロの恐ろしさや悲しさを子供の目線で描く(75点)
イラン映画界の巨匠モフセン・マフマルバク監督の次女ハナの長編劇映画デビュー作。彼女は8歳の頃に『おばあさんが病気になった日』という30分もない短編ドラマを撮り、14歳で『ハナのアフガンノート』(長女サミラ監督作『午後の五時』のメイキング的ドキュメンタリー)という長編ドキュメンタリーを撮った。そして、19歳になった頃、監督第三弾である本作を完成させた。
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