秋の気配が濃厚な景色はしっとりと落ち着いた奥行きのあるフィルムに収められ、深い緑と濃い赤が山奥の空気の透明感を醸し出す。恋と仕事に疲れ果てたOLがもう一度希望を取り戻すなかで、人生に倦んでいた男も光明を見出す。(50点)
© 2008『天国はまだ遠く』製作委員会
秋の気配が濃厚な景色はしっとりと落ち着いた奥行きのあるフィルムに収められ、深い緑と濃い赤が山奥の空気の透明感を醸し出す。そこはまるで体を動かすことで心の傷を治療していく癒しの場のよう。恋にも仕事にも疲れ果てたOLがもう一度希望を取り戻すなかで、彼女に誘発されるかのように人生に倦んでいた男も光明を見出す。むしろ手垢のついた題材ながら、湿気を含みながらも冷ややかな早朝の靄のようなすがすがしい映像が、不思議と安らいだ気分にさせてくれる。
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徳井義実が実に好演(65点)
死がすぐそばにあるのにまったりした生の空気が流れ、その対比が魅力になっている。生きることに疲れた千鶴は山奥の民宿で自殺を図るが失敗。宿の主人の青年・多村の不思議と癒されるキャラのおかげで本来の明るさとおおらかさを取り戻していく。千鶴が自殺する動機が甘く見えるのは、田村が抱える心の傷が数倍深いから。だが、誰かと一緒に食べる美味しい食事は、そんな傷をもゆっくりと治癒してくれる。微妙な距離感の二人の関係が気になるが、映画は明白な答えは出さず余韻を残す。徳井義実が実に好演で、特にエンドロール後のワンカットの、切ない表情が絶妙だ。
◆都会人にとっては一服の清涼剤(65点)
京都府宮津の山奥にある「民宿たむら」にやってきたのは、都会の生活に疲れ果てたOLの千鶴(加藤ローサ)。その夜、千鶴は睡眠薬を大量に飲んで自殺を図るが、未遂におわる。千鶴は、民宿をひとりで切り盛りする青年、田村(徳井義実)のさり気ない優しさにふれ、少しずつ元気を取り戻していくが……。
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