生玉子と紅生姜に七味唐辛子を振った牛丼、主人公の口の中に甘さと辛さとすっぱさが同時に広がる。生きていくつらさを1人で抱える彼に兄が牛丼をおごるシーンは、人生の厳しさとすばらしさを噛み締めるような味わいが絶品だ。(70点)
牛丼に生玉子と紅生姜をのせ、七味唐辛子を振りかけて箸でかき混ぜて一気にかき込むと、主人公の口の中に甘さと辛さとすっぱさが同時に広がる。生きていくつらさを1人で抱えようとして家出した彼に兄が牛丼をおごるシーンは、人生の厳しさとすばらしさを噛み締めるような味わいが見事に描かれていて絶品だ。両親がいなくなって兄姉弟3人だけで暮らしていかなければならない、それでも一番年下の自分がしっかりして兄や姉に苦労をかけたくないという思いに、いつしか彼自身が押しつぶされそうになる。その気持ちは兄も姉も同じなのに弟は気付かない。しんどいからこそみんなで力を合わせてなければならないという兄の言葉は、時には迷惑をかけ、時には手を差し伸べる家族の絆の強さを教えてくれる。