ヒロインにとってニセ札作りは、自分だけではなく国民を裏切った国家に対する復讐。映画は悪事と自覚しつつも、村全体を豊かにしようとする「正義感」に満ちた彼らの行動を通じて、貨幣経済に毒された日本の現状を憂いている。(50点)
© 2009『ニセ札』製作委員会
太平洋戦争の敗戦で価値観が180度逆転し、戦後は都市部との経済的格差が広がるばかり。山奥の小さな村で教職に就くヒロインは、信じてきた国家に人生が翻弄されたという思いを募らせている。彼女にとってニセ札作りは、自分だけではなく国民すべてを裏切った国家に対する復讐。それは多かれ少なかれ加担したメンバー全員の共通認識だ。映画は悪事と自覚しつつも、村全体を豊かにしようとする「正義感」に満ちた彼らの行動を通じて、貨幣経済に毒された日本の現状を憂いているようだ。
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拝金主義を痛烈に笑い飛ばす(70点)
© 2009『ニセ札』製作委員会
木村祐一の長編初監督作は、キリリと締まった佳作だ。終戦直後、紙すき産業が盛んな村で、ニセ札作りが始まる。それは村ぐるみで挑んだ一大犯罪だった。完全分業で挑むニセ札作りは本格的かつ牧歌的。だがこれは単なる金儲けのためでない。終戦で激変した価値観の中、生きていかねばならない庶民は、建前だけの民主主義なんぞには頼れない。だが、市場リサーチのつめが少々甘かった。実話に基づくニセ札事件の物語は、拝金主義を痛烈に笑い飛ばすものだ。ナチスや旧日本軍の幹部が聞いたら怒られそうな、村の偽札作りだが、お金を「所詮ただの紙切れ」と言い切る教師かげ子の顔は誇りに満ちて美しい。倍賞美津子がさすがの名演だ。