雑草や金属の質感など、CGのハイパーリアルな風景やマテリアルは人間の視覚が認知する以上のディテールを細密に再現し、3D処理によって立体感を持たせることで実際に物語の世界に迷い込んだと錯覚するほどのクオリティだ。(40点)
© nWave Pictures
雑草が生い茂る空き地、打ち上げられたロケット表面の金属の質感、月面に踏み出す宇宙飛行士の足、管制センターのスイッチ類etc. CGのハイパーリアルな風景やマテリアルは、通常、人間の視覚が認知する以上のディテールを細密に再現し、3D処理によって立体感を持たせることで物語の世界に迷い込んだと錯覚するほど。従来の3D映画でよくみられた動く物体の輪郭が版ズレするような粗さもまったくなく、非常にクオリティの高い映像に仕上がっている。しかし、そこで繰り広げられるのは、なぜか幼児向けの冒険譚。欧米では「アニメは子供向け」という固定観念でもあるのか、日本人にストーリーを考えさせればきっとものすごい作品になったはずだ。
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衝撃のラスト(50点)
© nWave Pictures
史上初、全編3D上映を目的に企画・製作された長編アニメは、ハエが主人公。1969年、ハエの子ナットは、アポロ11号にこっそり乗り込み月に行こうと決心する。物語は、小さな生物が知恵と勇気で夢をかなえる定番の展開。無重力状態でハエの子供3匹が、ヨハン・シュトラウスのワルツにのって踊る場面は、幸福感に満ちている。だが、実はこの映画のキモは、エンドマークの後にある。アポロ11号のパイロットだったバズ・オルドリンその人が登場するのだ。いきなり豪華な特別ゲストだが、この英雄飛行士が言うセリフがすごい…というかヒドい。「宇宙ロケットにはハエのような汚染物質はいません」と、なにげなく、かつ露骨な言葉をかましてくれる。85分間にわたるナットの冒険を、汚染物質のひと言で片付ける非情な態度。よい子の皆さんにはキツすぎやしないか。R指定にすべきと本気で思った衝撃のラストであった。