◆広末涼子はミスキャストだが、犬童監督が見せる演出の「奇手」は素晴らしい(73点)
戦後64年が過ぎて、昭和も遠くなった。我々の年代なら僅かにリアリティを感じられるストーリーも、今の若い世代にどれだけ実感として伝わるのか疑問だ。松本清張の原作自体が、もはや時代遅れなのかも知れない。さらに、本作は犯人が途中で分かってしまい、推理ものとしての面白みは余りない。むしろ、犯人の動機に焦点が当てられる。それが社会派推理と言われる所以だ。動機がテーマだとすると、クライマックスは回想場面になりがちだ。映画としては構成が難しい。この難問に、犬童一心監督は驚くべき「奇手」で答える。それは実に鮮やかな手で、本作の面白さは全てそこにある。
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◆機関車と岩肌の黒、降り積もった雪の白、水墨画のような風景の中では、ヒロインの地味なコートは不吉、謎の女の真っ赤なコートは破滅を象徴し、男の失踪をきっかけに起きる連続殺人事件を軸に、人間の業の深さと愚かさを描く。(50点)
機関車と岩肌の黒、降り積もった雪の白、冬の能登半島の水墨画のような風景の中では、ヒロインの地味なコートですら不吉な予感をもたらし、謎の女の真っ赤なコートは破滅を象徴する。もはや戦後は終わったといわれ、世の中はからは戦争の爪あとは消えても、心に傷を抱えて生きている女たち。やがてその傷は秘密になり、殺意の引き金に指をかける。映画は一人の男の失踪をきっかけに起きる連続殺人事件を軸に、人間の業の深さと愚かさを描こうとする。
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◆生誕100年以外に理由や情熱があったのか(20点)
松本清張の代表作で、数々のサスペンス劇場の元ネタとなった『ゼロの焦点』が、原作者の生誕100年記念で再映画化された。原作は1ページ目からワクワク感に襲われるエンタテイメント作品だが、映画版は気を抜くと最初の1分間から睡魔に襲われる、斬新な映像解釈である。
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◆幸せを探してもがく女性たちが過去に囚われる運命は、あまりにも切ない(65点)
2009年に生誕100年を迎える社会派ミステリーの巨匠・松本清張。初期の傑作を映画化した本作は、原作にはない新たな要素が加わっている。昭和30年代、禎子は、見合いで鵜原憲一と結婚。しかし式から7日後に、夫は仕事の引継ぎに向かった前任地の金沢で行方不明に。禎子は夫を探すために冬の北陸へと向かう。地元の名士の夫人である佐知子や、どこか影がある受付嬢の久子と出会うが、夫の行方は分からず、時を同じくして連続殺人事件が起きる。
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