◆女が同じ場所を何度も通ったり、ショーウインドウに映る男を認めたりするたびに、男はばれるのではないかという緊張感と見失うのではという焦燥感に襲われる。その感情が絡み合い、映画はただならぬサスペンスに満たされる。(40点)
カフェで偶然見かけた女の、男は後をつける。通りを渡り、繁華街を抜け、迷路のような裏路地を足早に歩く彼女を、少し距離を置いて追う。そのお世辞にも上手とは言えない尾行術は、女がいつかは男の存在に気付くのではないかという予感をはらみ、顔のアップと遠景の繰り返しでセリフがほとんどない展開の乏しい映像に奇妙なテンションをもたらしている。女が同じ場所を何度も通ったり、ショーウインドウに映る男を認めたり、突然振り返ったり立ち止まったり、角を急に曲がったりするたびに、男はばれるのではないかという緊張感と見失うのではという焦燥感に襲われる。彼のそれらの感情がみごとに絡み合い、映画はただならぬサスペンスに満たされていく。