◆執拗に熱い視線を絡ませる男と女。男はその女にファム・ファタールの予感を覚え、官能に溺れていく。細かいカット割りと大胆なカメラワークで、理性を失うほどの狂おしい苦悩にさいなまれていく様子が繊細かつ饒舌に描かれる。(70点)
執拗に熱い視線を絡ませる男と女。男はその女にファム・ファタールの予感を覚え、官能に溺れていく。結婚を間近に控えたエリートサラリーマンが南国の喧騒で出会った女と密会する過程で、映画は恋愛の本質に迫っていく。愛した記憶と愛された記憶、貪るようにお互いの肉体を求める姿は人生のはかなさを象徴しているようだ。細かいカット割りと大胆なカメラワークで、分別を持った大人が、理性を失うほどの狂おしい苦悩にさいなまれていく様子が繊細かつ饒舌に描かれる。
この映画の批評を読む »
◆昭和の時代を生きた世代の男性の勝手な妄想(20点)
映像は綺麗だが、中身は男の身勝手さと女の浅はかさを描く時代遅れのラブストーリーにすぎない。1975年のバンコク。高級ホテルのスイートルームに住む美女・沓子は、お金に不自由なく、多くの男性から愛されることで満ち足りていた。豊は、バンコクに赴任してきたエリートビジネスマン。二人は出会った途端に互いに強く惹かれ情熱的に愛し合う。だが、豊には日本に残した婚約者の光子がいた。バンコクの狭い日本人社会で二人のことはたちまち噂になる。
この映画の批評を読む »
◆中山美穂が12年ぶりに主演し、夫・辻仁成の原作で激しいラブシーンを演じた話題作。イ・ジェハン監督は単なる恋愛映画とせず、中山美穂を戦後日本が失った「夢」の象徴として描いているところがいい(80点)
古いホテルには、「魔物」が棲み着くものだ。
本作は恋愛映画に違いないが、どこかファンタジーのようにも思える。中山美穂が演じる主人公・沓子の存在が、余りに非現実的なのだ。バンコクのオリエンタルホテル(旧ザ・オリエンタル、バンコク)のスイートルームに住み続け、いつまでも男を待っている女。浮世離れしていて、すべて男の幻想ではないかと思えるほどだ。この幻想味こそ、本作の最大の魅力であり、監督のイ・ジェハンはじめ韓国の手練れのスタッフが、すべて中山美穂のために作り上げた仕掛けだ。12年ぶりの映画主演となる中山は、幻想のマジックの中で光り輝いている。
この映画の批評を読む »