騙す方も騙す方なら、騙される方も騙される方(70点)
© 2009『クヒオ大佐』製作委員会
詐欺というと華麗なテクニックが常だが、この映画の主人公のそれはまぬけすぎて逆に魅力に見えるから不思議だ。恋愛詐欺師・クヒオ大佐は実在の人物で、女性たちから約1億円を巻き上げたというから驚きである。名前こそクヒオだが正真正銘の日本人だ。90年代初頭、米軍特殊部隊のパイロットを名乗るクヒオは、デタラメな経歴で女性を騙して金を巻き上げていた。どう見ても怪しい彼に、弁当屋の主人のしのぶや自然博物館の学芸員の春は騙され、正体を見破ったホステスの未知子でさえも彼に惹かれていく。
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自らの妄想を信じ、己の言葉に酔い、なりたかった理想の姿になりきる。結婚をエサに数々の女からカネを巻き上げる瞬間に、この詐欺師の人生に真実の灯がともる。どんな嘘も相手が信じてくれている間だけは、本当になるのだ。(40点)
自らの妄想を信じ、己の言葉に酔い、なりたかった理想の姿になりきる。結婚をエサに数々の女からカネを巻き上げる瞬間に、この詐欺師の人生に真実の灯がともる。彼にとって、どんな嘘も相手の女が信じてくれている間だけは本当になり、彼の存在を肯定する。小さな嘘より大きなホラ、具体的な固有名詞とディテール、そして何より自分自身が作り話を信じるのが詐欺師にとって一番大切なことをこの作品は教えてくれる。だが、映画は主人公の内面に深く踏み込もうとはせず、行為だけからは彼の人となりがイマイチ見えてこない。
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◆日本人なのにアメリカ人と名乗って女性を騙した実在の結婚詐欺師を、堺雅人が付け鼻と片言の日本語で演じる。岡本喜八作品にも通じる映画らしい映画(90点)
本作は’二部構成’になっている。第一部は「血と砂と金」。岡本喜八監督の「血と砂」から取ったタイトルであることは明らかだ。第一部はごく短く、第二部の「クヒオ大佐」が本編となる。
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