物語はステレオタイプだが劇中の音楽は素晴らしい(60点)
サルサの魅力のひとつに望郷の念があるが、伝説のサルサ歌手エクトル・ラボーの歌には故郷プエルトリコと父への強い思慕がある。60年代から80年代にかけてNYで新しい音楽サルサを確立したエクトルは、妻プチの支えも虚しくドラッグに溺れていく。モノクロ映像のプチのインタビューによる回想でしばしば流れが中断されるのが気になるが、色鮮やかで情熱的な過去との対比が効いている。エクトルは傑出した歌手だが人間的には子供と同じで、社会性も皆無。プチは妻というより母親のようだが、ラテン系らしい似合いの夫婦だ。それにしてもミュージシャンというのは、ジャンルを問わず、なぜこうも薬に溺れるのか。偉大な歌手の伝記映画がどれも似るのが頷ける。物語はステレオタイプだが劇中の音楽は素晴らしい。