訛りのきつい津軽弁に始まり、キャベツ畑に埋められたり、首のない人間と会話したり、さらには心臓が止まっても生き続ける。それらのエピソードは、物語の有機的な帰結よりも思考を置き去りにすることが目的であるかのようだ。(40点)
© 2009「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会
半分くらい何を言っているのか理解不能の訛りのきつい津軽弁に始まり、キャベツ畑から首だけ出して埋められたり、逆に首のない人間と楽しく会話したり、さらには心臓が止まっても生き続ける。それは知的障害を持った主人公の妄想でもなく、何らかの隠れた寓意を含むメタファーでもない。周囲の人々は微妙に歪んだ現実を疑問をさしはさむことなく受け入れる。脳みその配線を間違えられた男が異常な方法で少しづつ正常を取り戻す過程で、常識や理屈を超越した観念が映画を支配する。答えを探すことを拒否し、考えることを放棄させるようなエピソードの連続は、物語の有機的な帰結よりも見る者の思考を置き去りにするのが目的であるかのようだ。
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新人監督・横浜聡子の個性を感じる映画(60点)
© 2009「ウルトラミラクルラブストーリー」製作委員会
全編津軽弁で描く不思議系の恋愛映画だ。舞台は青森。風変わりで子供のような農業青年が東京から来た女性に一目ぼれし、初恋を実らせようと常識はずれの方法で猛アプローチ。やがて奇跡が起こる。分かりやすさから出来るだけ離れようとしている作品で、それは農薬によって日常から離脱する主人公の言動とも重なっていく。あっけにとられるラストも含めて、新人監督・横浜聡子の個性を感じる映画だ。全体的に軽いテイストで演技も嘘臭い感じがちょっと面白い。この作品が好きかと問われると疑問なのだが、何か新しい流れが生まれる気配を感じてしまうのは否定できない。トンデモナイ役柄で演技するARATAなど、役者のすっとぼけた雰囲気を味わいたい。ありえないことが集まると“進化”が生まれる。それは映画も同じだ。