余命があと24時間と宣告された人間は、おのれの痕跡をこの世に残そうとする過程で、今までの人生で得られなかった充足感を得ていく。満足に死ぬためには精一杯生きなければならないと訴える一方、管理社会の恐ろしさを告発する。(70点)
© 2008間瀬元朗/映画「イキガミ」製作委員会
自分の余命があと24時間と宣告されたとき、人は残された時間をどう使うのか。かなわなかった夢を最後まで追う者、個人的な恨みを正義にすり替える者、愛する人に役立てようとする者。その当事者だからこそできることと、その人間でもできないこと、それでも確実に迫りくる死の恐怖と闘いながら必死で何かを完遂しようとする。彼らがおのれの存在した痕跡をこの世に残そうとする過程で、今までの人生で得られなかった充足感を得ていく。映画は、満足して死ぬためには精一杯生きなければならないと訴える一方、市民生活が国家に管理される恐ろしさを告発するのも忘れない。
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生きる輝きを描いた秀作(80点)
© 2008間瀬元朗/映画「イキガミ」製作委員会
不気味な管理社会を舞台に、生きる輝きを描いた秀作だ。近未来の日本で、国家公務員の藤本は、3人の若者に政府発行の死亡予告証・逝紙(イキガミ)を届けるが、彼らの最後の24時間を知ることで生と死の意味を問い直していく。国家が法のもとに人の命を奪うのが絵空事に思えないのは、イキガミが、戦争中の召集令状・赤紙と不思議なほど重なるためだ。3話が絡み合わないことで、残されたものの強い思いが共通であることと、主人公の感情の推移が強調され、演出の上手さを感じる。監視カメラの映像の挿入も見事に効いていた。盲目の妹を救うエピソードは過剰に感傷的なのに最も心に残るのは、主人公が死に様ではなく生き様にこだわり、ついに行動を起こすから。安易に恋愛描写に頼らず、しっかりと物語を語って感動を呼んだ滝本監督の手腕は高く鋭い。若手俳優の好演で期待を上回る魅力的な映画になっている。
アナタは24時間後に死にますという「イキガミ」が届いたら?(90点)
© 2008間瀬元朗/映画「イキガミ」製作委員会
漫画の映画化が最近目立つが、よもやこれほど高く評価できる作品に出会えるとは思わなかった。
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