古い記憶は鮮明なのに、最近のことは覚えていない。自分が徐々に壊れて行くのを自覚している妻と、彼女をできる限り愛そうとする夫。映画は、人格を失いつつある妻を見守り続ける夫の姿を通じて、老人介護のあり方を問う。(70点)
フライパンを冷凍庫にしまい、黄色の概念を失う。古い思い出は鮮明なのに、最近のことは覚えていない。徐々に壊れて行くのを自覚している妻と、彼女をできる限り愛そうとする夫。妻の心から自分が消えてしまうつらさを視線だけで演じるゴードン・ビンセントの苦虫を噛み潰したような抑えた表情はあじわい深く、忘れていることさえ忘れてしまうアルツハイマー症患者を演じるジュリー・クリスティの明るい表情が悲しい。映画は、人格を失いつつある妻を見守り続ける夫の姿を通じて、老人介護のあり方を問う。