単純にキワモノとして見るに限る(45点)
監督が映像美で鳴らすトライ・アン・ユンで、米・韓・日のイケメン俳優競演とくれば、期待するファンも多かろう。だが、残酷描写やグロテスクなオブジェが登場するハードな内容なので要注意だ。心に傷を抱える探偵クラインが探すのは、謎の青年シタオ。一方、香港マフィアのボスも溺愛する愛人を探す過程で彼を追っていた。シタオは他人の傷を引き受けるキリストのような存在だが、探偵やマフィアの救いにはならない。無慈悲な傷を受けながら何度でも生き返るが、結局誰の人生にもかかわらない。これがキムタク・キリストの限界か。第一、救世主を信じる地盤がこの物語にはない。“痛み”をテーマに宗教的な深読みもできるが、単純にキワモノとして見るに限る。何もかもちぐはぐなこの話は、トライ・アン・ユンの新しい挑戦なのだから。