暴君のように見えてその大きな志はたくさんの人を魅了し、人望はなくとも人気はある。そんな豪放磊落な主人公を、竹中直人がいつものようなくどさで演じる。それは彼の妻を演じる吉永小百合の潔癖なまでの清楚さと対称的だ。(40点)
© 2008「まぼろしの邪馬台国」製作委員会
白い杖を振り回し、見えなくなった目ではなく心臓の目で人間の本質を見極める能力を持つワンマン経営者。鉄道会社経営のかたわら郷土史家としても第一人者の権威になっている。一見、暴君のように見えて大きな志はたくさんの人を魅了し、人望はなくとも人気はある。そんな豪放磊落な主人公を、竹中直人がいつものようなこってりとしたくどさで演じる。それは相手役の吉永小百合の潔癖なまでの清楚さと対称をなし、物語からリアリティを奪っている上、奔放な夫に献身的に寄り添う妻という構図は余りにも古臭い。
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インパクトが弱く、優等生のよう(50点)
© 2008「まぼろしの邪馬台国」製作委員会
超多作な堤監督のヒューマン・ドラマは丁寧だがインパクトが弱く、優等生のよう。美しき大女優・吉永小百合が、まだ存命の女性を演じるとあっては、過激な演出もできないというところか。昭和40年代に邪馬台国ブームを巻き起こした盲目の文学者で破天荒な人物・宮崎康平と、彼を支えた妻・和子の絆を描く。物語は、古代史の謎を解く壮大な夢から、いつしか二人で歩むことを慈しむ夫婦愛にギアチェンジ。唐突な卑弥呼コスプレには思わず引いたが、いつもは鼻につく竹中のエキセントリックな芝居が、この物語ではピッタリとフィットしたのは収穫だ。「まぼろしの邪馬台国」オリジナル・サウンドトラック島原の子守歌のメロディが心に残る。