感動を演出する方法に誤りがある(35点)
© 2008『その日のまえに』製作委員会
大林作品に死はつきもの。だか今回は感動を演出する方法に誤りがある。物語は、余命わずかと宣告された妻と、彼女を見守る夫や子供たちの最後の日々をつづるものだ。たたみかけるようなセリフやカット割は、残り少ない人生を静かに大切に生きる人物の描写には不適切。モチーフとして多用する宮沢賢治の世界観もフィットせず、いきなり素人芝居が入り込んだように見える。この物語はストレートな家族愛だけで十分なはず。美しい詩や音楽は小道具としてさりげなく使うべきだ。過剰なノスタルジーや叙情性が、習慣化した作家性としか映らないようでは才人・大林宣彦の名がすたる。
自分の余命を知ったとき、人は残りの時間をどう過ごすべきか。残される家族に迷惑をかけないように身辺整理する母親が最期の願いを叶えていく過程で懐かしい思い出がよみがえり、過去と現在が交錯する不思議な体験をする。(40点)
© 2008『その日のまえに』製作委員会
自分の余命を知ったとき、人は残りの時間をどのように過ごすべきか。ここで描かれているのは、やり残したことや叶えられなかった夢を追うのではなく、まだ生きていかなければならない夫や子どもに迷惑をかけないように身の回りを整理していく母親。彼女のただひとつの願いは、新婚時代に過ごした海辺の街の散策だ。懐かしい思い出がよみがえり、過去と現在が交錯するうちに、いつしか不思議な体験をする。しかし、全編宮沢賢治の「永訣の朝」をベースにした童話絵本のような絵作りと台詞回しは子供向けのお芝居のようで、映像には向いていない。
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◆全編を叙情的なムードに染め上げた(55点)
イラストレーターとして活躍する健大(南原清隆)の妻とし子(永作博美)は、ある日、病院で突然の余命宣告を受ける。一時退院したとし子は、健大と一緒に、結婚当初に住んでいた街を訪れる。懐かしい街を思い出に寄りそうように歩くふたり。時を同じくして、治る見込みのない病に侵された俊治(筧利夫)もこの町にやって来て……。
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