◆白黒をはっきりさせたがる大人には向かない作品(55点)
27歳の書店員、夏樹(佐藤江梨子)は、本好きを買われ、「愛のわからないひとへ」というコーナーを任されていた。ある日、夏樹は万引きをしたはずの女性を捕まえるが、彼女のかばんからは何も出てこなかった。店長共々、女性の家に出かけて謝罪するも、女性の夫の怒りを買ってしまう。ところが翌日、女性の息子、光治(柳楽優楽)が書店にやってきた。彼は夏樹や店長に、もう謝りに来なくていいと伝えるが……。
◆白黒をはっきりさせたがる大人には向かない作品(55点)
27歳の書店員、夏樹(佐藤江梨子)は、本好きを買われ、「愛のわからないひとへ」というコーナーを任されていた。ある日、夏樹は万引きをしたはずの女性を捕まえるが、彼女のかばんからは何も出てこなかった。店長共々、女性の家に出かけて謝罪するも、女性の夫の怒りを買ってしまう。ところが翌日、女性の息子、光治(柳楽優楽)が書店にやってきた。彼は夏樹や店長に、もう謝りに来なくていいと伝えるが……。
◆豊かで複雑、閉塞的な本の世界の長所と短所を表す見事な設定(60点)
孤独という共通の“愛読書”を持つ女性と少年の関係は、コミュニケーションそのものは希薄なのに絆を感じさせる。27歳の書店員の夏樹は、10代の頃から無謀な恋愛を繰り返したせいか、愛に対して懐疑的。今は大手出版社の営業マン・鹿島となんとなく関係を持っている。そんな夏樹が自らの体験を反映して作った書棚「愛のわからない人へ」のコーナーが評判に。ある日、万引き事件がきっかけで、本好きの高校生・光治と出会う。光治は学校でも家庭でも問題を抱えている少年だった。本を介して二人は繋がっていくが…。
◆仕事・恋・人間関係、しがらみを感じながらも何とか折り合いをつけているヒロインは、現状を否定しているわけではないが、「これは本当の自分ではない」と違和感を覚え、満ち足りているはずなのに居心地の悪さを感じている。(50点)
「“愛”は本を売るために作家が考えた言葉」、ヒロインが言うように、恋愛小説に描かれた物語のごとき劇的な出来事などわずかで、ほとんどの人は退屈な毎日を繰り返しながら歳老いていく。そんな、仕事・恋・人間関係、それらにしがらみを感じながらも何とかうまく折り合いをつけている彼女の平凡な日常がリアルだ。現状を否定しているわけではないが、どこか「これは本当の自分ではない」と心の隅で違和感を覚え、満ち足りているはずなのに居心地の悪さを感じる現代女性の繊細な心理を佐藤江梨子が好演。不幸な環境の少年を救うことで己を変えるきっかけを探そうとする姿は、真正面から他人と向き合うのが生きることの第一歩であると語っている。