◆山田洋次の円熟味(75点)
『おとうと』をみると、これこそ横綱相撲だなという感じを受ける。最近は横綱というと、酔っ払って周りをぶんなぐる血の気の多い奴といった印象が強いが、もちろんこの映画はそうではない。奇手に逃げず、昔ながらの定番の技術のみで、堂々と見せる風格ある映画という意味である。
◆山田洋次の円熟味(75点)
『おとうと』をみると、これこそ横綱相撲だなという感じを受ける。最近は横綱というと、酔っ払って周りをぶんなぐる血の気の多い奴といった印象が強いが、もちろんこの映画はそうではない。奇手に逃げず、昔ながらの定番の技術のみで、堂々と見せる風格ある映画という意味である。
◆家族の絆が薄れつつあるこの時代に、改めて家族のあり方を見つめさせてくれる"人間讃歌"の秀作(80点)
日本映画界を代表する巨匠、山田洋次監督が「十五才 学校IV」(2000年)以来、10年ぶりに撮影した現代劇「おとうと」は、そのキャリアにおいて常に日本の家族と、その精神性を描き続けてきた山田監督の集大成的な1本。涙あり笑いありの感動作だ。
◆戦後の日本の価値観の変遷を一気に説明するパートが印象的(60点)
どう見ても姉弟に見えない吉永小百合と笑福亭鶴瓶の二人が人情味たっぷりに演じる家族ドラマ。東京で暮らす吟子は、女手一つで娘の小春を育てあげ、小さな薬局を営んで慎ましく暮らしている。一方、大阪で芸人の真似事をする弟の鉄郎は、いい年をして問題ばかり起こし落ち着く気配もない。吟子はいつも鉄郎をかばってきたが、ある出来事がきっかけで「もう、うんざり」と弟に絶縁を言い放つ。鉄郎は行方をくらますが、あるとき大阪の施設から連絡が入る…。
◆迷惑ばかりかけられるのに見捨てることができない。幼いころから弟の出来の悪さを知っている、血縁の濃い姉という立場の微妙な距離感と戸惑いを吉永小百合が上品に演じ、彼女が口にする言葉の美しさが映画に品を与えている。(80点)
出来が悪いからこそいとおしく、迷惑ばかりかけられるのに見捨てられない、肉親のストレートな情愛。中年を過ぎてもいまだに中途半端な生き方しかできず身内のトラブルメーカーとなっている弟を持ったヒロインは、いつか彼が立ち直ると期待している。物語は、そんな姉と弟の腐れ縁を人情味あふれるタッチで描く。親ならばたいてい先に死ぬが、姉はほぼ同時に年をとる。幼いころから弟の素行を知っている、血縁の濃い姉という立場の微妙な距離感と戸惑いを吉永小百合が上品に演じ、彼女が口にする言葉の美しさが映画に品を与えている。