◆大げさな演技で苦悩を表現するわけでもなく、センチメンタルな音楽で感情を押し付けるわけでもない。経営者で家長である主人公の日常と死、そして残された妻子や同僚を淡々とスケッチし、人物の心理を想像させる余白を残す。(60点)
ひっきりなしに鳴るケータイに応える男がパリの雑踏を颯爽とかき分ける姿が多忙ぶりを象徴し、娘たちをかわいがり妻のご機嫌をとる週末は深い愛を示す。ビジネスマンとしての一面と父親としての顔、どちらもエネルギッシュで魅力的な男は、経営者であり家長であるがゆえに胸中をだれにも打ち明けられない。映画は大げさな演技で苦悩を表現するわけでもなく、センチメンタルな音楽で感情を押し付けるわけでもない。主人公の日常と死、そして残された妻子や同僚を淡々とスケッチし、登場人物の心理を想像させる余白を残す。