Sweet Rain 死神の精度 - 福本次郎

なすべきことをなし終えた者だけが死という安息を得る。死神は「実行」予定者が満足な死を迎えられるよう少しだけ手を貸してやる。しかし、限りある生だからこそ充実させようと必死になって生きる人間の美しさを描きれていない。(40点)

 なすべきことをなし終えた者だけが死という安息を与えられる。この作品の死神は不幸をもたらすために人に近づくのではなく、観察した上で生存か死を決める。その基準は対象者がどこまで死に値する人生を送ってきたか。命の奪う権限は持つが、その判定はあくまで人間の生き方によるという死神像が新しい。十分に生きた者は「実行」、まだ足りない者は「見送り」とされ、「実行」判定予定者には満足な死を迎えられるよう少しだけ手を貸してやる。しかし、限りある生だからこそ充実させようと必死になって生きる人間の美しさを描きれていない。

 1985年、死神は千葉と名乗って一恵というさえない女性に近づく。一恵は電話クレーマーからしつこく付きまとわれる。2007年、藤田というやくざを調査する千葉は、阿久津というチンピラと張り込み中に敵対する組織に拉致される。2028年、海辺の美容室を訪ねた千葉はその店の美容師に奇妙なことを頼まれる。

 若い女性、中年男性、老婆とそれぞれのエピソードで主人公を変えているが、表現方法もそれに合わせているかのよう。特に藤田編は’70年代の刑事アクションドラマを見ているような演出にあえてこだわっている。iPodや携帯という小道具が出てこなければ舞台設定が30年前と勘違いするほどで、レトロなやくざ像にあわせたのだろうが、古くささしか感じさせなかった。

 阿久津は歌手として成功した一恵の歌が嫌いという伏線が、美容師のエピソードで生きてくるのだが、その美容師が年老いた一恵だったなどというのは、たとえ原作どおりとしてもやはりうそ臭い。一方で、老美容師のまだ見ぬ孫が髪を切りに来るという最大のクライマックスで、どの子が孫だったか彼女に分かってしまうなどという改悪を加えている。また、この老婆には若き一恵の左手首にあった傷が消えていたり、「2002年から4半世紀ぶりに日本でW杯が開催?」などというラジオ放送が流れたりと、あまりにもディテールがおろそかになりすぎ。ためらい傷は美容整形で消せるかもしれないが、W杯が25年ぶりというのはおかしい。これは「死神の精度」などいい加減なものであるということを言いたかったのだろうか。原作のテイストを残しつつ映画独特の雰囲気を作り出すことはできなかった。。。

福本次郎

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