エンドロールが象徴する、“映画”そのものに対する愛情があふれる作品だった。(点数 80点)
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家族が寝静まった深夜、自宅を抜け出して友だちと合流する5人の少年
と1人の少女。誰もいない小さな駅で始まる8ミリ映画の撮影は“大人
には教えたくない秘密”のワクワク・ドキドキ感がいっぱいだ。期待
と不安、そして自分たちが特別な何かになったかのような優越感など、
そろそろ親の束縛から自由になりたい少年少女たちの少し背伸びした
い思いが共感を呼ぶ。そこで生まれるのは、秘密を共有した者だけの
固い友情とほのかな恋心。さらに偶然「見てはいけないもの」を見て
しまった強烈な体験は、彼らの絆をより深くする。
田舎町の中学生・ジョーは、映画製作仲間のチャールズたちとゾンビ
映画の撮影中に列車脱線事故をすぐそばで目撃する。翌日から現場一
帯は軍の管理下に入り、街では数人が行方不明になる。
まだ動画を撮るのはプロか一部の趣味人だけだった1979年当時のディ
テールが豊かで、あの時代を生きた観客のノスタルジーを刺激し、ま
た非常にスピルバーグ色の強い映像の数々は「E.T.」を思い出させる。
母を失い父と衝突ばかりしているジョー、飲んだくれの父に胸を痛め
ているアリス、父親同士の確執など、少年たちと家族の関係が濃やか
に描写されていて、それがアリスを巡る2人の微妙な駆け引きになるな
ど、少年たちの感情が手に取るようにリアルで、大切なのは身近な人
々との心の交流であることをこの物語は訴える。何より、エンドロー
ルが象徴する、“映画”そのものに対する愛情があふれる作品だった。
(福本次郎)