SON OF RAMBOW - 岡本太陽

2人の少年がランボーの息子が主人公の映画を作る!?心温まる物語(80点)

 2005年に公開された映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』。この映画を監督したガース・ジェニングスとプロデューサーのニック・ゴールドスミスは友人同士で、1999年にHammer & Tongsというプロダクションカンパニーを立ち上げ、ミュージックビデオの制作を中心に活動していた。ファットボーイ・スリム、REM、ブラー等のミュージックビデオを手掛け、人気クリエーターとなった2人が、『マルコビッチの穴』等で知られるスパイク・ジョーンズに認められ、彼の推薦で制作したのが『銀河ヒッチハイク・ガイド』だった。この作品はダグラス・アダムス原作の大ベストセラーSF小説を映画化したもので、かなりの期待が寄せられていたが興行的には失敗に終わっている。

 そのガース・ジェニングスとニック・ゴールドスミスが再び映画に挑んだ作品が『SON OF RAMBOW』だ。こちらは『銀河ヒッチハイク・ガイド』とは違い、2007年のサンダンス映画祭のプレミア上映から始まり、数々の映画祭で大絶賛されている。その理由はおそらくガース・ジェニングスのオリジナル脚本にあると思われる。彼はユニークなアイデアがたくさんあり、自身で書き上げたオリジナル脚本で実力を発揮する映画監督なのだろう。

 80年代初頭、あるイギリスの田舎町にウィルという空想好きでシャイで物静かな少年がいた。彼は非常に厳しいブラザレンと呼ばれるキリスト教を信仰する家庭に育った。ブラザレンはテレビや映画を観る事、音楽を聴く事等を固く禁じているので、授業でテレビを観なくてはいけない時はウィルは1人だけ、廊下でテレビが終わるのを待たなくてはいけないのだ。ある日ウィルがいつもの様に廊下に出ていると、教師に叱られある1人の男子生徒が追い出される。彼はリー・カーターという学校一態度の悪い生徒だ。カーターに話しかけられるウィルだが、怖くてまともに会話が出来ない。しかしカーターのついた嘘がきっかけでウィルはカーターの家を訪れる事になる。また、そこでウィルは初めて映画というものに出会う。しかもそれは『ランボー』。興奮してしまったウィルはカーターと「SON OF RAMBOW(ランボーの息子)」という2人が出演する映画を撮り始める。そして彼らは互いが互いを必要とし合っていることに気付くのだった。

 この映画は監督のジェニングス氏が80年代に体験した出来事を基に脚本が書かれている。そのせいもあり、作品は非常にノスタルジックな雰囲気に包まれている。この映画の登場人物ウィルとカーターは共に友達のいない学校のハグレ者。昨年アメリカで公開された秀作『テラビシアにかける橋』でも周囲とうまく調和のとれない孤独な少年が主人公だった。彼は近所に引越してきた女の子と森で空想する事で現実とのバランスをとっていた。『SON OF RAMBOW』のウィルとカーターも共に映画制作という、現実ではないものを具象化する作業を通し、現実とのバランスをとろうとしているのだ。

 ウィルが影響を受ける映画が『ランボー』というのがまた良い。今まで映画やテレビを観た事なかった少年が観る『ランボー』はかなり衝撃的なものに違いない。そして『ランボー』がウィルを変えていく。ウィルは脚本を自身で書き、映画制作にもどん欲になり、周囲の生徒とのコミュニケーションも出来る様になる。カーターはウィルよりも精神的には大人で、自身の殻から抜け出そうとしているウィルをサポートする。しかし、元々友達のいない同士、ウィルがどんどん学校で人気が出てしまうと、カーターの胸の内は複雑なものとなる。このウィルとカーターの心の温度差が涙を誘う。

 ウィルとカーターの他に印象的なのは、彼らの学校に期間限定で複数のフランス人生徒がやってくるのだが、そのうちの1人の奇抜なファッションのディディエ。彼はウィルとカーターの保守的な学校にやってきた途端、手下を従える程、大人気になるのだが、後に彼も実は周りと調和のとれない少年なのが明らかになる。彼の存在も『SON OF RAMBOW』が魅力的な物語になった要因の1つだ。

 素敵な空想的な映像と笑いで彩られるこの『SON OF RAMBOW』は『銀河ヒッチハイク・ガイド』で期待通りのものが作れなかったガース・ジェニングスとニック・ゴールドスミスの起死回生の1本。わたしはウィルが『ランボー』と出会ったシーンを観て、自分が初めて映画館に行って観た『E.T.』という衝撃的な作品の事を思い出した。初めて観る映画というものはやはり人に忘れられない強烈な印象を与えるのだろう。今年シルベスタ・スタローンのランボーが『ランボー 最後の戦場』として20年振りに帰って来たが、あの醜い作品に比べると『SON OF RANBOW』は何倍も楽しめる映画だ。

岡本太陽

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