SNOW ANGELS - 岡本太陽

インディペンデント界の若き才能デヴィッド・ゴードン・グリーン監督最新作(35点)

 日本ではジェイミー・ベル主演の『アンダートウ 決死の逃亡』くらいでしか知られていないと思うが、それを監督したデヴィッド・ゴードン・グリーンという才能ある若き映画監督がいる。2000年に彼が発表した『GEORGE WASHINGTON』という作品は詩的で素晴らしくショックを受けたものだ。その彼が『ALL THE REAL GIRLS』『アンダートウ 決死の逃亡』に続き監督した映画が公開された。『SNOW ANGELS』というケイト・ベッキンセール主演で描く悲惨な物語だ。

 この物語は男子高校生アーサーがマーチングバンドの練習をしている際に銃声が聴こえてくるところから始まる。そこから時が戻るのだが、この時点で観る者としては何か悪い出来事が起こるのではと予想させられる。

 主演のケイト・ベッキンセールは子持ちのシングルマザーのアニーを演じている。アニーは以前アーサーのベビーシッターをしていたのだが、現在は彼らは中華料理屋で働く同僚。アーサーにとってアニーは美人のアイドル的存在だ。アニーの別れた夫グレンを演じるのは『ジェシー・ジェームズの暗殺』のサム・ロックウェル。グレンはキリスト教を信仰しているのだが、自分自身の心の平穏をそれに頼っている傾向にある。彼は精神的に不安定で自殺未遂をした事すらあるのだ。そういった事もあり、アニーは彼と一緒に娘のタラは住ませる事が出来ないと判断したのだ。

 現在アニーはタラと二人暮らしで、職場の同僚バーブの夫ネイトと浮気をしている。元夫のグレンはその事を知り嫉妬に狂い、酒に酔ってはアニーの家にやって来て彼らの邪魔をする始末。そしてある日、アニーの体調が優れない時、彼女がしばらく目をつぶっていた間に、娘がいなくなるという事件が起こる。誰しもがグレンを疑うのだが…。

 この映画は半分がケイト・ベッキンセールとサム・ロックウェル元夫妻の話、もう半分はアーサーの話なのだが、この2つの話は対比として描かれている。それを思わせるかの様に、この映画のポスターに「Some will fall, some will fly」と書かれている。ケイト・ベッキンセールとサム・ロックウェルの話は陰鬱で、絶望的な物語なのだが、アーサーの場合は同じ高校に通うリラという女の子との恋や彼の家族との関係の話で、少年の明るい未来を伺わせるものだ。

 このアーサー役の少年は最近よくメディアで見るマイケル・アンガラノ。ディズニー製作の『スカイ・ハイ』の主演で注目を集めた。今後はジェット・リーとジャッキー・チェンが共演する事でも非常に話題になっているアクションアドベンチャー『ドラゴン・キングダム』に主役で出演している。期待の若手俳優だ。またアーサーに恋するちょっとオタクなリラ役を演じるのは『ジュノ/JUNO』で印象的だったオリビア・サールビー。『ジュノ/JUNO』でもそうだったが、彼女はマイルドな独特の雰囲気を持っている。この映画は若手に注目だ。

 デヴィッド・ゴードン・グリーンというと、詩的な台詞や世界感が売りなのだが、それが作品を重ねるごとに薄れていっている様に感じられる。前作『アンダートウ』ではテレンス・マリックの『天国の日々』を真似た作風にしており、詩的な雰囲気もあったのだが、作品自体に面白みがあるものではなかった。今作『SNOW ANGELS』はとにかくデヴィッド・ゴードン・グリーンの良さが微塵も感じられない作品で、知らずに観たらまったく彼の作品とは気付かないだろう。やはり『GEORGE WASHINGTON』が一番素晴らしい。

 デヴィッド・ゴードン・グリーンの作品はだいたい素敵な笑いが紛れ込んでいるのだが、今回の作品もシリアスな雰囲気の中にいくつかの「クスッ」という笑いを見つけることが出来た。また、今回の作品『SNOW ANGELS』はスチュアート・オナンの同名小説を映画化したものだが、きっとデヴィッド・ゴードン・グリーンは脚色ではなくオリジナルの脚本を書いた方が彼らしさを感じられる作品を作る事が出来るだろう。彼はガス・ヴァン・サントの様にアート系映画監督なのである。

岡本太陽

【おすすめサイト】