ジェームズ・マースデンがオチを務める童貞喪失映画(30点)
童貞喪失は思春期の男の子にとっての普遍的なテーマ。そしてそれを題材にした映画も特にコメディ映画として多く作られている。昨年では男の友情を描く映画としても楽しめる『スーパーバッド童貞ウォーズ』が同じテーマの作品で大ヒットを記録した。この秋にもまた1つの童貞喪失映画が公開される。その映画『SEX DRIVE』は女性とセックスするために旅に出るという童貞喪失ロードームービーだ。
イリノイ州に住む18歳童貞のイアン(ジョシュ・ザッカーマン)はインターネットでセクシーなミス・テイスティ(カトリーナ・ボウデン)に出会う。彼は相手の素性を特に知らないままテネシー州、ノックスヴィルで彼女に会う事を約束する。兄レックス(ジェームズ・マースデン)の愛車を無断で拝借し、イアンは親友のランス(クラーク・デューク)とフェリシア(アマンダ・クルー)と共にテネシーを目指すが…。
この映画にはまず決定的な間違いがある。それは見た目から明らかなのだが、主人公を演じるジョシュ・ザッカーマンが彼の家族の中で唯一ユダヤ人という事だ。制作者はこの物語を同じくユダヤ系俳優が主人公の映画『アメリカン・パイ』の様な作品にしたかったのだろうが、ザッカーマンがその家族の中にいる事実はただ単に不自然に感じられる。
この映画にはアンディ・ベーレンズの「All The Way」という原作小説があり、それを基にジョン・モリスが脚本を書いた。監督はショーン・アンダースが務め、撮影監督にはデヴィッド・ゴードン・グリーン作品を手掛けるティム・オアーが手掛ける。この物語は「もう可笑しくてしょうがない!」という作品でなければいけなかったのだが、脚本が粗末なため笑える部分が少ないのが致命的。それに無駄にティム・オアーという撮影監督を使用しており、彼の自然な撮影スタイルの良さがこの映画では全く活かされていない。
またフレッシュな役者が主に物語をリードして行く中、ジェームズ・マースデンやセス・グリーンを脇役で出演させる事で、映画を引き締める事に努めているのだが、特にジェームズ・マースデンにおいては、制作側が彼の存在に頼っているにもかかわらず、彼がこの映画に必要だったという決定的なシーンが用意されていない。彼がケツを掘られるシーンくらいあっても良いはず。これ1つでこの映画のインパクトがもう少し強くなったに違いない。
(岡本太陽)